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建通新聞社(東京)
2024/05/16

【東京】都 前払金4割の工事、18億に引上げ検討

 東京都は、前払金制度で4割を支払う工事の対象ラインを9億円未満から18億円未満に引き上げることを検討している。入札契約制度改革により9億円以上の大規模工事を受注する中小企業が出てきた中で、経営の安定化を図るのが狙い。5月15日に開いた入札監視委員会・制度部会で議題に挙げ、委員からの意見を踏まえて制度設計を進めていくとした。また、現場代理人の常駐義務を緩和して現場の兼務を認めることや、設計等委託の最低制限価格の算定式を改定する方針も示した。
 都の現行の前払金制度では、契約金額が9億円未満の場合にその4割を、9億〜36億円なら3・6億円を、36億円以上であればその1割を受注者に前払いする。中小企業の資金確保のため、中小企業の受注が多い金額帯を手厚くするとの考え方の下で、4割を支払う工事の対象ラインを9億円未満と設定している。
 工事の発注を巡っては、2017年からの入札契約制度改革により、中小企業に単体での入札参加を認めていなかった大規模工事の参加要件を緩和。能力のある中小企業は9億円以上の工事にも参加が可能となった。一方で、資材価格の高騰などを背景に中小企業を取り巻く経営環境は厳しい状況にあることから、4割の前払金を受けられる工事の対象ラインを9億円未満から18億円未満に引き上げる方針だ。
 これに伴い、前払金の支払限度額も3・6億円から7・2億円(契約金額18億円の場合の4割に相当)に変更。契約金額18億〜72億円は一律7・2億円、72億円以上は1割とする。
 改正により都が支払う前払金の額は単年度で約10億円増えると試算。件数ベースでは約99%が4割の対象になると見ている。
≪現場代理人の兼務容認へ≫
 現場代理人の常駐義務を緩和して、複数現場の兼務を認めることも検討。国による「常駐義務の緩和の基本的な考え方」を参考に、兼務を認める場合の要件として、▽契約金額4000万円(建築8000万円)未満▽現場間の距離が10`以内(島しょ部は同一島内)▽兼務可能な件数は2件まで▽現場代理人が不在となる際には連絡員を配置し、常に連絡が取れる体制を確保するとともに、重要な会議や主要な工程には参加・立会―を列挙した。これらを原則に掲げた上で、工事の特性を踏まえて各工事で兼務の可否を判断していく考え。
 設計等委託の最低制限価格については、23年10月から国の低入札価格調査基準価格の算定式を準用して制度運用していた。国が設定範囲の上限や参入率を一部引き上げる算定式の見直しを行って24年度の発注案件から適用したことを受け、都も同様に改定する。
 具体的には、▽建築設計=設定範囲の上限を80%→81%▽土木設計=設定範囲の上限を80%→81%、算定式のうち一般管理費等の算入率を0・48→0・50▽測量、地質調査=算定式のうち諸経費の算入率を0・48→0・50―に改めて、ダンピング対策のさらなる徹底を図る。提供:建通新聞社