東京都の小池百合子知事が建通新聞の単独インタビューに応じ、あらゆる災害への備えを強化するため、2023年12月にアップグレードした「TOKYO強靭(きょうじん)化プロジェクト」に基づく施策を積極的に展開する考えを強調した。能登半島地震の発生を受けて、東京の特性に合った防災対策の必要性にも言及。有効な手だてとなるハード面の整備を進める上では「建設業の人手不足や時間外労働の上限規制への対応にも配慮しなければならない」と力説しつつ、24年度から「全ての工事を週休2日制で発注できるよう準備している」などと述べて、建設業の働き方改革に協力する姿勢をアピールした。
小池知事は冒頭、能登半島地震の被害に触れながら、「都内でもマグニチュード7程度の首都直下地震が今後30年間に70%の確率で発生するという推計は変わっていない」と語り、いつ起きるか分からない災害への危機感をあらわにした。輪島・朝市通り周辺の大規模火災を引き合いに、「都内でも木造密集地域の改善が喫緊の課題」と改めて指摘。23年度から拡充した不燃化特区制度などを挙げて木密地域の安全性向上に意欲を見せた。
また、1400万人の都民のうち「約900万人がマンションなどの共同住宅で暮らしている」ことや、「通勤・通学や観光といった目的で東京を訪れる人も多い」ことから、「東京ならでは≠フ防災対策を実施していく」と説明。災害が起きても自宅で生活を継続できる「東京とどまるマンション」の普及に向け、エレベーターや給水ポンプの稼働に必要な非常用電源の補助経費などを24年度当初予算案に盛り込む方針を示した。
TOKYO強靭化プロジェクトのアップグレード版では、当初計画(22年12月)から事業規模を2兆円アップの17兆円に増額。今後10年間で7兆円を支出することになっている。
特に水害対策に関しては、気候変動の影響で降雨量が約1・1倍増加するとの将来予測を見据えた「地下河川」の整備構想を紹介。調節池などを連結して海までつなげることで、地下に川をもう一本造る「壮大な計画」なものの、「線状降水帯のような数時間降り続く豪雨にも高い効果を発揮することが期待できる」ため、早期の実現を目指すとした。
一方、これらの社会資本整備を担う建設業は「人手不足や時間外労働の上限規制への対応に迫られている」とし、適切な工期の設定や工事関係書類の簡素化、情報共有システムの活用などを通じて働き方改革を支援する立場を表明。その中で「来年度から原則として全ての工事を週休2日制で発注できるよう準備する」と明言し、週休2日制を巡る都議会本会議(23年12月)での関係局長答弁を知事として裏付けた。
併せて「後世に残る建設業の仕事はやりがいそのものだ」と語り、業界の魅力や存在意義を一般にも周知するために「都のさまざまな施策とも連携して取り組んでいきたい」と力を込めた。
提供:建通新聞社