東京都は「(仮称)社会的責任調達指針」の案をまとめ、1月15日に開いた有識者会議(座長・諸富徹京都大学大学院経済学研究科教授)に示した。都が行う工事と業務委託、物品の買い入れをはじめとした全ての調達を対象に、環境や人権、労働などの分野で受注者に求める基準を設定。受注希望者に対し、競争入札参加資格の申請時に指針に基づくチェックリストの提出を求める。2月中旬から3月下旬ごろにパブリックコメントを実施して、5月ごろに正式な指針を公表する予定だ。適用開始の時期は今後決める。
社会的責任調達指針は、公正性・透明性・経済性と中小企業の受注機会確保などの視点から、都が公共調達を通じて持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献するために策定する。
国際規範や各国の法令などに基づき事業者に順守を促す「義務的事項」と、総合評価方式などの際にインセンティブを付与する「推奨的事項」に分けて、調達過程で受注者に求める基準を設定。部品・材料の供給者や下請け、再委託先なども指針を順守するよう受注者に対応を促す。
案によると「義務」の基準には全般的な法令順守や資源保全に配慮した原材料の採取、国際的人権基準と労働基準の順守・尊重、長時間労働の禁止、知的財産の保護などを盛った。一方、「推奨」の基準では温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用、女性・障害者・社会的少数者(マイノリティー)の権利尊重などを掲げた。
指針の実効性を担保するため、競争入札参加有資格の申請時にチェックリストを用いて各事業者の取り組み状況を開示・説明してもらう。契約締結前には誓約書も提出させる。また、受注者には指針の順守に向けた履行期間中の取り組み内容を可能な限り記録・保管するよう求める。
運用に当たっては指針の不順守に関する通報窓口を設ける。履行期間中の案件を対象としつつ、期間終了後1年以内に知り得た情報については通報を受け付ける方針だ。
パブリックコメントの内容を踏まえて適用の開始時期を詰める。都は有識者会議の中で、競争入札参加有資格者や資格審査の申請希望者に対する十分な周知に取り組む考えを表明した。
提供:建通新聞社