東京都は「TOKYO強靱(きょうじん)化プロジェクト」をアップグレードした。総事業費を当初計画から2兆円引き上げて17兆円に見直し、このうち今後10年間で7兆円を支出する。水害対策については、2030年度までに新たに事業化する調節池の目標を約150万立方bから約200万立方bへと高めるとともに、各調節池を接続して海へと流下させる地下河川などの事業化に向けた調査・検討を24年度にスタートさせる。地震に対しては液状化対策やマンション防災への支援を強化。富士山の噴火に備えて火山灰の除去や資機材確保などの方法を具体化する。再生エネルギーの導入やグリーン水素の実装を加速する方針も示した。
「TOKYO強靱化プロジェクト」(22年12月公表)は、大規模な風水害や地震、火山噴火、新たな感染症の流行といったあらゆる脅威に備えるために必要な防災・減災対策を整理したもの。気候変動の影響などを踏まえ、ハード・ソフトの両面から各施策を強化することにした。
アップグレードの具体的な内容を見ると、水害対策では12月18日に公表した「気候変動を踏まえた河川施設のあり方」と「豪雨対策基本方針(改定)」の内容を反映。現状より降雨量が1・1倍に増えるシナリオを想定し、施設整備の目標を高めた。降雨量の増加分には調節池などで対応するため、30年度までに約200万立方bの調節池の事業化を目指す。
調節池の地下河川化に向けては、12月22日の定例会見で小池百合子知事が「調節池を連結させて、地下にトンネル式の川を造る」と説明。ルートや立坑の設置場所、流下先の選定など、事業化に必要な検討を24年度に始めることにした。
富士山の噴火への備えも強化するため、「大規模噴火降灰対応指針」を新たに策定。道路啓開体制を構築するため、資機材の確保方法や降灰の仮置き場候補地などを具体化する道筋を示した。この他、マンションの防災対策支援や災害時の電源・通信確保策、グリーンインフラの活用などを新たに盛り込んだ。
提供:建通新聞社