東京都は小笠原諸島の洲崎地区に飛行場を開設する可能性を探る中で、2023年度は施設配置や構造などの検討を進める。桟橋構造で滑走路やエプロン、ターミナルビルを設ける方針。これに伴う調査業務を9月に委託し、23年度内に成果をまとめる。今回の結果を踏まえて、24年度以降の調査事項を決めていく考え。
小笠原諸島の航空路開設を巡っては、これまで1995年に兄島、98年に父島の時雨山に飛行場の位置を決定したものの、いずれも自然環境への影響などが課題となり断念。その後、父島の洲崎地区活用案、硫黄島案、水上航空機案、聟島案の4案を候補に挙げつつ、2009年には自然公園法の特別保護地区となった聟島案を対象から外して、残る3案で検討を進めていた。18年からは最も実現性の高い洲崎地区の活用案に絞って集中的に検討している。
都や国土交通省、小笠原村で構成する「小笠原航空路協議会」が7月に開いた会合では、航空機の開発状況などを共有。自然環境への影響を考慮して、短い滑走路で運用できる2機について調査しているという。このうち「ATR42―600S」は延長1000b程度の滑走路で離着陸が可能。一方、「AW609」はヘリの機能を併せ持っており、延長400b程度の滑走路を利用する他、ヘリポートには垂直の形態での離着陸が可能だという。併せて、気象・海象調査なども行っており、工程や施工の安全性の検討に役立てるとしている。
今回の業務では、これまでの調査結果を踏まえて、複数の滑走路案の基礎資料を作成するとともに、航空路に適した施設配置や構造、飛行方式を検討する。飛行場配置計画を5ケース作成した上で、利用者の利便性や施工性などを踏まえた空港施設配置計画を作り、イメージ図をまとめる。
飛行場配置計画のうち、2ケースについては本体工と仮設工の構造形式と実現可能な施工計画についても練る。桟橋の上に飛行場施設を設ける方針で、維持管理性や構造性を調べ、事業費や工期を整理する。資機材の搬出入は仮設係留施設で行うことを想定しており、必要な施設や仮設ヤードも検討する。これらを基に施工計画や全体工事工程計画をまとめて、概算事業費を算定する。
港湾局が「令和5年度小笠原航空路基本計画調査委託」と題する希望制指名競争入札の手続きを進めており、9月13日に開札する。本年度に別途、気象・海象調査業務や環境調査業務も委託し、気象・海象調査については23年度で取りまとめが完了する。
前段となる22年度の業務は日本空港コンサルタンツ(中央区)が手掛けた。
提供:建通新聞社