東京都は社会的責任に配慮した公共調達指針の案をまとめ、7月21日の有識者会議(座長・諸富徹京都大学大学院経済学研究科教授)に示した。東京オリンピック・パラリンピック競技大会や大阪・関西万博に際して策定された調達コードをバージョンアップした内容で、人権尊重や労働問題などに対して受託事業者に求める基準を定める。都として独自に環境への配慮を重点に置き、温室効果ガス排出量の削減やゼロエミッション車の活用、水資源の保全・再利用をはじめとした取り組みを推奨する。8月末に開く次回会合までに案の修正版をまとめるとともに、実効性を担保する方法などを具体化したい考えだ。
公正性・透明性・経済性と中小企業の受注機会確保などの視点から、公共調達を通じて持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献するための指針とする。工事の発注から建築資材・副資材などの調達、納品、サービス提供に至るまで、国内外での原材料の採取、製造、建設、流通、運営に関する一連のプロセスで受託事業者に取り組みを求める形だ。
当日の有識者会議では、都が「(仮称)社会的責任ある公共調達指針」と題した案を説明し、委員側と意見交換。オリ・パラと大阪万博の調達コードを参考にしつつ、近年の社会的動向に加え、一過性のイベントではなく恒常的な都の公共調達であるという視点を反映して文言を追加・修正した内容となっている。
具体的には、▽全般▽環境▽人権▽労働▽経済―の五つの項目で構成。各項目について契約時の宣誓書や仕様を設定する際に、法令に基づいて受託事業者に順守させる「義務」と、取り組みを促す「推奨」の基準をそれぞれ定める。
項目のうち環境に関しては、温室効果ガス排出量の削減や水資源の保全に対する措置の実施を「推奨」するとして都独自の基準を追加。また、オリ・パラと大阪万博コードの基準を強化し、ゼロエミッション車や水素エネルギーの活用などに関しても「推奨」することで、受託事業者の取り組みを促すとしている。
案に対して委員側からは、「日本の最先端となる国際基準の指針を作ってほしい」との要望や、受託事業者の負担を考慮して「段階的な施行を進める方法も考えられるのではないか」との意見が挙がった。また、「中小企業に対しての配慮策を別途講じる必要がある」といった指摘も出た。
提供:建通新聞社