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建通新聞社(東京)
2023/07/19

【東京】都 洪水対策の目標整備水準引き上げ

東京都建設局は「気候変動を踏まえた河川施設のあり方(仮称)」の中間とりまとめを公表した。気候変動の影響による将来的な降雨量の増加を踏まえ、中小河川の洪水対策では目標整備水準を区部で時間最大83_、多摩部で時間最大72_に引き上げて調節池の整備・連携などを図る。低地河川の高潮対策に関しては防潮堤の嵩上げを基本としつつ、景観や後背地のまちづくりにも配慮して対策を強化する。有識者による検討委員会を通じて整備手法や効果の検証に関する議論を深めた上で、2023年度内に最終報告を得て都の方針を策定。「TOKYO強靱(きょうじん)化プロジェクト」のアップグレード版に反映させる。
 中間まとめでは、2100年時点で世界の平均気温が2度上昇して降雨量が1・1倍、海面の水位が最大約60a上昇するシナリオを基本として、中小河川の洪水と高潮対策それぞれの施設整備方針を設定した。
 洪水対策に関しては現在、目標整備水準を「年超過確率20分の1規模」に設定し、区部では時間75_、多摩部は時間65_の降雨に対応した護岸や調節池の整備などを進めている。この年超過確率を維持した場合、降雨量の増加を踏まえると区部で時間最大83_、多摩部で時間最大72_に対する治水安全度を確保する必要がある。
 時間50_を超える分はこれまでと同様に調節池で対応する。整備に当たっては、都内の河川沿いでまとまった事業用地の確保が難しいことや、複数の地点・流域からの取水が可能で施設規模やルートが比較的柔軟に設定しやすいことから、地下トンネル式が適していると判断。さらに、複数の調節池を連結して容量の相互融通を図る他、放流先までつながるトンネル(地下河川)を整備して、流下機能の強化を図りたい考え。
 一方、低地河川の高潮対策については、平均気温が2度上昇した際に伊勢湾台風級の高潮が起きた場合を想定して必要な堤防高を設定する。これに基づいてコンクリートの打ち継ぎや止水パネルの設置などで防潮堤の嵩上げを図る。橋梁の架け替えが難しい箇所などでは陸閘を組み合わせたり、水門や排水機場などを整備したりする。後背地の民間開発と一体的な開発が可能な河川では盛土してスーパー堤防を整備する案も含めて検討。これらの中から景観や環境、経済性を踏まえて整備手法を選ぶ。
 建設局は将来の気候変動の影響を踏まえた都の河川施設整備方針などを検討するため「気候変動を踏まえた河川施設のあり方検討委員会」を設置。22年6月からこれまでに3回開いた会合の議論を基に中間とりまとめを作った。パブックコメントなども実施して23年度内に最終報告を受ける予定となっている。提供:建通新聞社