東京都はWTO政府調達協定の対象工事の発注で、低入札価格調査制度の失格基準の運用を見直す。調査基準価格を下回った際、数値的失格基準に該当しても即失格にはせず、追加の書類提出を求めて調査・審議を実施する。ダンピング防止の効果を維持しつつ、WTO協定との整合性を図るのが狙い。6月27日の入札監視委員会制度部会(部会長・堀田昌英東京大学大学院工学系研究科教授)で了承を得たことから今後、財務局が具体的な制度設計に着手する。
都では、予定価格が一定金額以上の工事(建築4・4億円以上、土木3・5億円以上、設備2・5億円以上)に低入札価格調査制度を導入。調査基準価格を下回った際に「数値的失格基準」と「工事成績失格基準」の二つの失格基準による確認に加え、履行能力や経営状況が分かる調査資料の提出を求めている。
ただ、数値的失格基準を巡っては、WTO対象工事(都発注22・8億円以上)には最低制限価格を設定しないよう政令で定められていることから、入札監視委員会が2022年度に「数値的失格基準が最低制限価格と同様の機能を果たしているのではないか」と指摘していた。また、数値的失格基準は応札額ではなく、積算内訳書の各費目の金額ごとに一定の割合を定めているため、応札額が同じでも、数値的失格基準に該当するケースとそうでないケースが出る可能性がある。
これらの状況を踏まえ、都はWTO対象工事の失格基準の運用を見直すことにした。制度部会に示した案によると、数値的失格基準の線引きを維持したまま名称を「適用基準」に変え、この基準を満たさない場合に追加の調査票を提出してもらう=図。調査票の例として、安全衛生管理体制や品質確保体制、建設副産物に関する計画書などを想定しており、具体的な内容は今後詰める。工事成績失格基準は設けない方針だ。
22年度に契約したWTO対象工事8件(速報値)のうち、低入札価格調査を実施したのは4件・13者で、大半が辞退したという。このため委員側は「適用基準の導入によって、書類の追加提出による負担が重くなれば辞退者が増えるのでは」と懸念を表明。制度設計に当たり、調査票の内容などを精査するよう都に注文を付けた。
提供:建通新聞社