東京都産業労働局は、水素供給体制の構築に向けてパイプラインの敷設を含めた供給方法などを検討する。これに伴い、財務局が調査業務の委託先を希望制指名競争入札(総合評価方式)で決める。市場・補償鑑定関係調査Aの競争入札参加有資格者から6月16日まで希望申請を受け付けて、8月2日に開札。都内をエリア分けして水素の需要量を調査した上で、パイプラインと車両による供給の2手法を立案。川崎市から都内方面への供給方法や事業主体を整理してもらう。2024年3月29日までに成果を得て、後続の展開に備える。
今回の業務では水素供給体制の構築に関連する国内外の動向や需要の調査、供給方法の検討、関係者間の合意形成に向けた調整などを行う。このうち需要調査では、大規模な水素需要が見込まれる3カ所のエリアを中心に、30〜50年代にかけて10年ごとの需要量を試算する。
エリア分けの例として、都内の▽港湾(外貿コンテナふ頭などにある港湾機器での活用が見込まれるエリア)▽発電(発電所など将来的に大規模需要が見込まれるエリア)▽空港(空港周辺施設を含めた需要が見込まれるエリア)―を挙げている。また、需要先での受け入れ態勢(液体またはガスなど)や供給圧力、水素純度も含めてまとめていく。
供給方法については、パイプラインとローリー車などの車両による供給の2手法で検討。今後海外からの受け入れが予定される川崎臨海部などの拠点から、都内エリアへの供給を想定している。
パイプラインの場合には敷設ルートやパイプライン径・材質、供給量などの諸条件を整理する。事業主体についても検討し、@民間事業者1社A民間事業者複数者による合弁会社B民間事業者複数者による合弁会社に都が参画C都が主体の公営企業や公社Dその他―の各パターンでメリット・デメリットを提示してもらう。
これらの調査結果を23年度末までにまとめ、水素供給体制の構築に役立てる。
都は「ゼロエミッション東京戦略」(19年12月)で50年までにCO2排出実質ゼロを掲げており、「ゼロエミッション東京戦略2020Update&Report」(21年3月)では「2030・カーボンハーフスタイル」を提起している。こうした中、水素エネルギーを脱炭素社会実現の柱の一つとして、需要拡大と社会実装の加速に向けた取り組みを進めている。
6月1日には川崎市、大田区と水素エネルギーの利活用拡大を目的とした連携協定を締結。川崎市が液化水素サプライチェーンの国内受け入れ拠点に選定されたことを受け、多摩川を挟んで対岸にある羽田空港(大田区)を中心とした「空港臨海エリア」での水素の利活用拡大や供給ネットワークの構築を3者で検討するよう取り決めた。また、同月5日には国に対して、水素の需要の創出や供給体制の構築などにスピード感を持って取り組むよう要望書を提出した。
提供:建通新聞社