東京都都市整備局は大規模ターミナル駅の周辺地区にある中小規模のビルにリノベーションを促して、街のにぎわいと魅力の向上を図る。地域特性に応じてカフェやスタートアップ向けのコワーキングスペースなどを誘導できるよう、民間事業者に対する支援策を練る。神田や渋谷といった駅の周辺で施策展開を想定する中、2023年度の調査を通じて現況を把握し、先行的に事業を実施する地区の絞り込みや事業手法の検討などを進めていく。
都心では大規模ターミナルの駅前を中心に再開発が進んでいるものの、周辺の地区には老朽化して耐震性にも課題を抱える中小規模のビルが多く残り、機能更新が進んでいない。そういった地区の中には耐震性が十分で更新期を迎えていないビルや、立地の良さからテナントの引き合いが旺盛な物件も混在している。
既存ストックをリノベーションによって有効活用し、街の魅力向上につなげるため、「TOKYO強靱(きょうじん)化プロジェクト」(22年12月)で持続可能な都市づくりのリーディング事業に位置付けて、23年度に検討を始めることになった。
「TOKYO強靱化プロジェクト」では、先行して事業に取り組む候補として神田地区を例示。神田駅に近い大手町・丸の内・有楽町地区では大規模な再開発が続いている反面、神田警察署通りの沿道などには1階部分が駐車場のビルがあるなど、街のポテンシャルを生かしきれていない。
また、再開発が続く渋谷駅の周辺も候補に挙がりそうだ。IT企業が集積する「渋谷三丁目地区」、ファッションやアート、エンターテインメントといった文化の拠点になっている「神南一丁目北地区」と「道玄坂二丁目地区」などがあり、リノベーションを促せば、にぎわいの維持・創出や魅力向上につながると見ている。
いずれも、共同建て替えなどを実施する場合に地域貢献に応じて容積率を緩和する「街区再編まちづくり制度」の対象地区(街並み再生地区)に指定しており、同制度と連動させたリノベーション支援が考えられる。
これらを踏まえ、都市整備局では23年度に基礎的な調査を業務委託して、各地区にある建物の現状や地元区の意向などを整理。その上で、建築基準法や都の建築安全条例への適合など、リノベーションに当たっての法規制上の課題を精査するなどして、先行的に事業を実施する地区や民間事業者に対する支援策を固めたい考え。
提供:建通新聞社