東京都財務局は、入札監視委員会第2監視部会(部会長・有川博日本大学総合科学研究所客員教授)による2021年度第4四半期の契約工事6件を対象とした審議の内容を公表した。いずれの案件も入札手続きがルール通り運用されていたと結論付ける一方、委員側から1者入札に関する指摘が続出。競争性を確保するため1者入札となった要因を分析し、適切に改善していく必要があるとした。
審議対象は▽警告表示板設置工事(1)=警視庁、1者入札事案▽阿土山林道災害復旧工事=総務局、同一事業者による長期継続受注事案▽篠崎ポンプ所発電設備再構築工事=下水道局、高額事案▽都庁第一本庁舎(3)電気設備改修工事その2=財務局、高額事案▽梅沢治山工事=産業労働局、高落札率事案▽本郷庁舎外51か所給水栓自動水質計器用信号伝送装置取替工事=水道局、高落札率事案―の6件。
それぞれの案件を所管する担当部局の職員が工事の概要や契約の経緯などを説明した後、委員がその妥当性を審議した。
1者入札事案の「警告表示板設置工事(1)」は希望制指名競争入札で、希望5者、指名10者のうち応札が1者となった。落札率は99・92%だった。
委員側が1者入札の背景をただしたのに対し、発注部局の警視庁は「発注時期が遅くなったため、他案件を受注してしまい辞退者が多かったのではないか」と回答。これを受けて委員側は、「今回の結果を教訓に、発注時期を早めるか業者の状況をよく判断した上で工期を設定すべき」と注文を付けた。都発注工事を全体的に見ると、発注時期の平準化は「改善傾向にある」(財務局)という。
ただ、同工事を含めて、審議対象6件のうち4件の落札者が1者入札で決定。さらに、4件ともその1者が予定価格と同額か、近い額で落札していた。
都は中小企業の積算にかかる負担に配慮して、低価格帯の工事で予定価格を事前公表している。このため委員側は「結果的にほとんどが予定価格に張りつくような形で高落札率が続いているのではないか」と推察しつつ、事前公表の対応について「本来の目的に本当に即しているかどうかを常に頭に置いた運用と検証を続けてほしい」と求めた。
さらに、高価格帯の工事で実施している予定価格の事後公表も、「工事発注規模価格帯の設定が予定価格の事前公表と同じような機能を果たしているのではないか」との見方を示しながら、「運用に細心の注意を払っていただきたい」と意見した。
入札契約制度全般に対しては、「業者への辞退理由のヒアリングと併せて、発注部局として1者入札の原因を分析」した上で、「次回同様の発注をする際には、改善すべき点を整理して、報告できる」ように体制の整備を促した。
提供:建通新聞社