トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

建通新聞社(東京)
2023/03/09

【東京】都 海底ケーブル強靱化、利島・御蔵島で

 東京都デジタルサービス局は島しょ部の海底光ファイバーケーブルを強靱(きょうじん)化する。波浪などによるケーブルの破損を防ぎ、安定した通信環境を確保するためで、過去にケーブルの損傷が起きた利島と御蔵島の陸揚げ部を優先して対策を講じる。御蔵島は弧状推進工法(HDD工法)を採用して地中に管路を設ける。利島では波の影響を受けづらいエリアにケーブルを敷設し直す。ケーブルの保守・運用に関する協定を結んでいるNTT東日本が詳細設計を進めており、2023年度内に工事を始める予定だ。
 海底光ファイバーケーブルは島内の超高速ブロードバンドサービスを支えるインフラ施設。都が島しょ部の5村6島(利島、新島、式根島、神津島、御蔵島、青ケ島)にケーブルの敷設を順次進め、20年度には全ての島で超高速ブロードバンドサービスの利用が可能になった。
 ただ、荒天時に波浪で動いた転石がケーブルを挟んだり、圧迫したりして破損するケースがこれまでに複数回発生。19年には大規模な通信障害が起きた。特に利島と御蔵島の海底には転石が多く分布しているだけでなく、外洋に直接面しているため波浪の影響を受けやすいことが分かっている。
 このため全島のケーブルを強靱化する目的で有識者による検証委員会を設置。過去の通信障害事例を踏まえ、利島と御蔵島でケーブルの陸揚げ部の対策を優先的に進めるべきとの提言を得た。さらに、両島の陸揚げ部の具体的な対策を検討する有識者委員会を新たに設け、工法の特定を含む報告書をまとめてもらった。
 報告書では、両島の現地調査を基に▽HDD工法▽立坑+水平推進工法▽港湾施設利用(防波堤上へのケーブル敷設)▽安定エリアへの設置―の4案の比較検討の結果を提示。  
 それによると、御蔵島ではHDD工法を採用することにした。地上からボーリングマシンを発進し、護岸などの下部を弧状に掘削して延長約700b、口径40aの管路を構築。水深約20bの地点で海中に出すため、水深の浅い位置にある転石を避けてケーブルを通すことができる。
 一方、利島は土質条件などから地中への管路構築が適していないと判断し、安定エリアへの設置案を採用するとした。波の影響を比較的受けにくい利島港東部の岸壁と防波堤で囲まれた箇所にケーブルを通し、船が錨を下す泊地を避けて陸揚げする。ケーブルの敷設ルートや延長は詳細設計の中で確定する。
 各島の村役場や港湾関係者、港湾管理者などとの協議・調整を進めつつ詳細設計をまとめ、23年度内に工事をスタートする見通し。当初予算の一般会計に「利島・御蔵島情報通信基盤改修工事」の経費として15億円を計上。いずれの島も工事が複数年にわたることから、利島で限度額16億5000万円(24年度)、御蔵島で同55億4000万円(24〜25年度)の債務負担行為を設定して後年度支出を担保する。提供:建通新聞社