東京都は「TOKYO強靱(きょうじん)化プロジェクト」を策定した。気候変動の影響で激甚化する豪雨災害や大規模地震、火山噴火、未知の感染症といったあらゆる脅威に対し、2040年代に目指す東京の姿と施策を示したもの。このうち豪雨対策では、区部で1時間当たり75_降雨への対応を基本としてきた目標水準を85_に引き上げるとともに、調節池の整備を加速する方針だ。プロジェクト全体の事業費を15兆円と見積もった中で、今後10年間に6兆円を投じる。
同プロジェクトでは都が直面する危機として▽風水害▽地震▽火山噴火▽電力・通信などの途絶▽感染症―の五つを取り上げ、これらが複合的に起きた場合も想定しながら、必要な取り組みを網羅した。危機ごとの事業規模(重複あり)は風水害が6・6兆円(うち今後10年間2兆円)、地震が9・5兆円(同3・7兆円)、火山噴火が2・1兆円(同0・6兆円)などとなっている。
風水害に対しては、これまでの施策の強化・拡充とスピードアップを図る。河川施設を増強するため、区部では施設整備の目標水準を時間85_降雨に引き上げるよう検討中。今後、豪雨対策基本方針を改定する中に盛り込む予定としている。調節池に関しては30年度までに150万立方bの新規事業化を目指しており、この目標達成時期を前倒しする考え。
東京港の高潮については、2100年までに想定する最大約60aの海面上昇に対応できるよう、防潮堤の段階的な整備などを実施する。
地震対策では、木造住宅密集地域の不燃化や木造住宅の耐震化に向けた支援を拡充。加えて、交通網を確保するため、特定緊急輸送道路の総合到達率100%(6月末現在92・6%)を目指して沿道建築物の耐震化を働き掛けていく。
火山噴火を巡っては、降灰がライフラインに与える影響を抑えるため、道路啓開に必要な資機材を確保。灰の収集・処分について国・他県などとの役割分担を具体化する。
また、まちづくりに感染症の防止という観点を取り入れる。公園整備や道路空間の再編に取り組む中で、ソーシャルディスタンスを確保できるオープンスペースや歩行者空間の整備などを進め、開放的でゆとりある空間を創出する。
この他、水素社会の実現やDXの推進などを通じて、災害時の電力・通信・データ途絶などを防ぐ施策などを盛り込んだ。
提供:建通新聞社