東京都都市整備局は2000年以前に建築された新耐震基準の木造建築物(新耐震木造建築物)の耐震化に向けた調査を始める。新耐震木造建築物を全て耐震化すれば、首都直下地震が起きても全壊棟・死者数を現況より約8割減らせるとの推計などを踏まえた対応。調査を通じて棟数や地域分布などを把握するとともに、目標値や目標年次を設定して今後の耐震化施策を検討する。耐震改修促進計画を改定して施策を推進する見通しだ。
都では耐震改修促進計画(21年3月一部改定)に基づいて、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建築物の耐震化を促してきた。これにより一戸建てやマンションなどを含めた都内の住宅は、81年6月以降の新耐震基準を満たす物件の割合(耐震化率)が20年度末現在で92%に達している。
一方、16年に発生した熊本地震では、新耐震基準の木造建築物であっても、00年の耐震規定強化(2000年基準)より前の物件の一部で倒壊被害が起きた。また、都が10年ぶりに見直した首都直下地震などの被害想定(5月)では、都内の全ての住宅が新耐震基準を満たした場合、全壊棟数と死者数は現況より約6割減少すると推計。さらに、2000年基準を満たせば被害の8割減が達成できる可能性があるとしている。
これらを踏まえ、新耐震木造建築物の耐震化に向けた調査を実施することとし、9月27日に希望制指名競争入札で業務の委託先を決めて作業を進める。
具体的には、都内にある新耐震木造建築物の棟数を築年数別、区市町村別、用途別に把握。区市町村や他の道府県が実施している助成などの取り組み内容と実績も調べる。その上で、耐震改修促進計画の改定を視野に、今後の耐震化施策の対象とする棟数・戸数や目標値・目標年次を設定して年度ごとの事業費を推定していく。23年3月17日を期限に業務成果を得る。
《TAAFが年末に提案書》
新耐震木造建築物を巡っては、東京都建築士事務所協会(TAAF)も対策の必要性を指摘している。都が省エネ・再エネ住宅の普及を目指す中、既存の建物に太陽光発電設備を設けたり、高断熱化を施したりすれば重量が増え、耐震性能(必要耐力)の不足が生じる可能性にも言及。行政による助成の拡充や、早急な耐震化が必要だと訴えている。
TAAFの調査によると、2000年基準を満たしていない木造住宅の耐震化に助成している都内の自治体は港区と杉並区、江戸川区、三鷹市の3区1市のみだという。このため提案書を年末にまとめ、行政の担当者や住宅の所有者らに対策の必要性を呼び掛けていく方針だ。
提供:建通新聞社