厚生労働省東京労働局は解体工事現場で死亡災害が多発していることを重く見て、解体工事業などの関係4団体に労働災害防止対策の徹底を要請した。8月30日の会見で辻田博局長=写真=が明らかにした。要請では事前調査の実施や作業計画の策定、墜落・転落をはじめとした労災の防止などを挙げて取り組みを強化するようを求めている。また、10月11日に解体工事業の事業者などを集めて講習会を開き、安全な施工に向けた対応を呼び掛ける。
今年発生した都内建設業の労災では8月29日現在17人(前年同期比2人増)が死亡。このうち3人は解体工事現場で命を落としている。
具体的には▽2月に20歳代の解体工(経験1年以上5年未満)が墜落・転落▽5月に50歳代のとび工(経験20年以上30年未満)が飛来・落下▽6月に30歳代のとび工(経験10年以上20年未満)が飛来・落下―で亡くなった。東京労働局は「事前調査の未実施」や「作業計画の未策定」などが要因で、これらの死亡災害が発生したと分析している。
このため全国解体工事業団体連合会、東京建物解体協会、東京建設業協会、建設業労働災害防止協会東京支部の4団体に対し、8月10日付文書で労災防止対策の徹底を要請。重点事項に▽事前調査の実施、作業計画の策定、リスクアセスメントの実施▽墜落・転落災害の防止▽崩壊・倒壊災害の防止▽解体用機械による災害の防止▽石綿障害予防規則の順守―を挙げて取り組みを強化するよう求めた。
解体工事の事業者などを対象とした10月11日の講習会は、東京労働局がある九段第3合同庁舎(千代田区)の11階会議室で開催。解体工事を巡る労災防止対策や労災の発生状況・事例を説明する他、災害防止活動の事例発表、石綿対策の説明もある。定員100人、無料でホームページから参加申し込みを受け付ける。
辻田局長は30日の会見で、解体工事現場での死亡災害の多さを指摘。移動式クレーンの転倒事故や、エレベーターの組み立て作業などに伴う死亡災害の多発を踏まえた関係団体への要請(6月、7月)にも触れながら、「特徴的な災害が出てきた都度、関係団体に注意喚起をし、取り組みを促していく」と語った。
提供:建通新聞社