東京都は将来の気候変動の影響を踏まえて治水対策を強化する。現在進めている河川整備と併せて、中小河川流域の洪水対策と低地河川地域の高潮対策に取り組みたい考え。目標となる整備水準や整備する施設などの具体化に向け、6月27日に有識者による検討委員会の初会合を開いた。全5回程度の会合を通じて2023年度に最終報告を得るとともに、同年度内に都としての整備方針も策定する予定だ。
気候変動の影響による降雨量の増加や海面上昇、台風の大型化などを踏まえ、今後の洪水・高潮対策となる施設整備を考えるため、「気候変動を踏まえた河川施設のあり方検討委員会」(委員長・山田正中央大学研究開発機構教授)を設置して議論してもらうことになった。
初会合では、都が今後の検討の方向性について説明。洪水対策に関しては、都内に25ある中小河川流域のうち、10の対策強化流域をモデルケースに挙げて検討する。
都内の河川は沿川に住宅やビルなどが立ち並んでいるため、河川整備に必要なまとまった事業用地を確保することが難しい。また、密集した住宅地では安全や騒音への配慮、埋設管の移設協議などが不可欠なことから、完成までに長い期間を要する場合が多い。
これら地理・地形的な課題を考慮して、洪水対策の施設整備は調節池の設置を基本としつつ、トンネルで複数の調節池を連結して容量を確保したり、流下施設を造ったりする方針だ。
過去の浸水被害状況や人口・試算などの流域特性、現在の対策状況といった複数の評価指標を用いて整備の順序を考えるとしている。
一方、高潮対策は、現行水準の伊勢湾台風級が大型化した場合を想定して目標整備水準と対象範囲を設定する。江東内部河川流域では計画降雨量を再検討し、水門閉鎖時の内水位の算出や排水機場の能力の照査も実施。その上で、堤防の嵩上げや水門・排水機場の新設・改良、スーパー堤防の整備といったメニューの中から対策の内容を選び、緊急性と影響度の高い箇所を優先して整備を進める方針。検討委員会での議論を通じて考え方を整理していく。
提供:建通新聞社