東京都住宅政策本部は都営住宅の建設工事や設備工事に関わる主要団体と実施した意見交換の内容を明らかにした。週休2日制の導入や遠隔臨場、BIMの活用などの共通テーマを掲げて意見を交わした中で、とりわけBIMを巡っては、いずれの団体も初期投資の費用負担や人材育成、業種間の連携といった環境が整っていない状況を説明。業務効率化の面で「BIMを活用するメリットが少ない」との認識を示した。
意見交換には東京建設業協会(東建)と東京都中小建設業協会(都中建)、東京都管工事工業協同組合(東管協)・三多摩管工事協同組合(三管協)が参加。日程を分けて会合を開いた。
テーマごとの主なやり取りは次の通り。
■BIM
都住宅政策本部がBIMの活用を進めるに当たり必要な取り組みを尋ねたところ、東建は「一定程度進んでいるが、中小企業にはICTに精通する社員を雇う余裕がなく苦慮しているのが実態ではないか」と指摘。
都中建からは「建築だけでなく電気や設備の各会社が共有できないと効果が薄い」という意見や、「都営住宅は単純な工事なので、そもそもBIMを活用する必要があるか疑問」などの声が上がった。
東管協は「大手ゼネコンと仕事をしたことがある業者以外はBIMの知識がない」と答えた。
これらの意見に対し、都住宅政策本部は「今後の進め方について引き続き意見交換を行いたい」と協力を求めた。
■遠隔臨場
都住宅政策本部では、東部と西部の各建設事務所がそれぞれ2現場の定例会議などで遠隔臨場を試行しているという。
東建は「細かい打ち合わせや検査などではお互いに意図した箇所をカメラで写せない場合もある」と問題提起。併せて「タブレット端末を現場で使用すると破損する可能性がある。損料などの経費を負担してほしい」と提案した。
都住宅政策本部は「今後、本格実施する際は費用負担についても検討したい」と前向きな姿勢を見せた。
■週休2日制
東建は「2024年から適用される労働時間の上限規制に対応するためには週休2日が必須だ」と訴え、週休2日モデル工事を試行から本格実施へと早期に切り替えるよう求めた。
都中建は、会員企業に対するアンケートで寄せられた「現場を閉めても職員は書類作業が必要で休めていない」との声を紹介。東管協も「竣工直前などは休日を確保できず残業も増えている」と説明し、発注者が適切な工期を設定することの必要性を訴えた。
都住宅政策本部はこれらを踏まえ、「機械・電気設備工事と連携して、週休2日を確保するための課題抽出と適切な工期の検証などを、モデル工事を通じて行う」と説明。また、週休2日の下で技能者の給与水準を維持するため、労務単価の割り増しを求める意見もあったが、「国土交通省の動向を踏まえて検討していく」との回答にとどめた。
提供;建通新聞社