国土交通省関東地方整備局は羽田空港(大田区)内で実施するJR新線と京浜急行引き上げ線の鉄道基盤施設整備で、ECIを含む多様な入札契約方式を検討している。施工場所の狭さや既設構造物との近接、周辺交通の確保といった技術的課題がある中で、シールド工法や開削工法などを駆使して施工しなければならないため。有識者を交えた委員会で技術的課題への対応策を練りつつ、最適な入札契約方式の具体化に関わる第三者委員会も別途2021年度内に立ち上げる。JR新線の開削トンネルを皮切りに工事を進める方針でおり、これに伴う準備工事をスタートさせるなどして、23年度の本体工事着手につなげる。総事業費1000億円超を見込み、30年ごろの全工程完了を目指す。
羽田空港内に整備する鉄道基盤施設のうち、JR新線はJR東日本羽田空港アクセス線・新設建設区間(東京貨物ターミナル〜羽田空港新駅)の終点側に当たる延長約2000bが対象。上下線の軌道などを収める内径10・6b、延長約1900bの単円断面シールドトンネル1本(東京空港警察署付近〜京浜南運河)と、新駅のホームなどになる最大幅約23b×高さ20b、延長約500bの開削トンネル(P3駐車場前面)で構成する。シールドトンネルは国が空港内を造った後、京浜南運河を渡って東京貨物ターミナルに至る残りの施工をJR東日本に引き継ぐ。
開削トンネルの一部を対象とする基本設計をパシフィックコンサルタンツ(千代田区)で進めている他、空港内シールドトンネルの基本設計の委託先を10月中に決める予定。それぞれ21年度内に成果を得て、後続の詳細設計などに備える。また、開削トンネルの準備工事となる歩道橋撤去の施工者も10月中に決める予定だ。
一方、京浜急行引き上げ線は延長約330bの複線。京浜急行電鉄では、京急空港線羽田空港第1・第2ターミナル駅の端部から第2旅客ターミナルのエプロン方面に向かって、▽東京モノレール羽田空港第2ターミナル駅までのコンコースを改築(開削工法、延長30b)▽幅14・4b×高さ15・2bのボックストンネル1本(推進工法、延長14b)を構築▽外径高さ9・8b×幅9bの複合円形断面トンネル1本(シールド工法、延長285b)を構築―することを計画していた。
こちらも21年度内の基本設計委託に向けて発注手続きを進める予定でいる。
まず技術的課題への対応策を練るため、今年2月に有識者を交えた委員会(委員長・菊池喜昭東京理科大学教授)を設置。国交省の東京航空局と関東地整、JR東日本、京浜急行電鉄の担当者がメンバーで、日本埋立浚渫協会や日本建設業連合会の役員らもオブザーバー参加している。
10月の2回目の会合では、JR新線の開削トンネルを巡る▽高低差の偏土圧▽施工場所の狭さ(駐車場、周回道路、国道の供用維持)▽軟弱地盤対策(埋土層〜軟弱粘性土層)―を重要課題に挙げて議論した。今後、JR新線と京急引き上げ線のシールドトンネルなどを取り巻く課題も議論の俎上(そじょう)に載せていく。
提供:建通新聞社