国土交通省関東地方整備局は2021年度に遠隔臨場の試行導入工事を大幅に増やす。既に導入済みの案件と、これから発注者指定で導入する分を合わせ、少なくとも約470件での試行を見込んでいる。さらに、受注者希望による試行導入も積極的に受け付ける。発注者・受注者双方の働き方改革につながるだけでなく、新型コロナ感染症の拡大対策の観点からも積極的に活用を後押しし、次年度以降の標準化を見据えて利点や課題を検証していく。
遠隔臨場は、これまで監督官と受注者が対面で行っていた段階確認や材料確認を、身に付けられるカメラや通信機器を用いて遠隔で行うもの。監督官は遠隔地にある現場を訪問する手間が省け、受注者も現場のスケジュール調整が容易になるなど双方にメリットがある。新型コロナウイルス感染症対策を契機として特に関東圏で急速に普及し、関東地整管内では20年度に全国最多の166件を試行した。
関東地整は4月に試行の拡大方針を表明。予定価格3億円以上の工事を発注者指定とするとともに、立ち会い頻度の高い現場など遠隔臨場が有効な工事については、3億円未満であっても事務所長の判断により発注者指定で導入できるようにした。
これにより、21年度は6月1日時点で、32事務所が発注した183件の工事で試行導入。さらに、これから発注者指定で遠隔臨場を試行導入する工事として3億円以上で100件、3億円未満で190件を予定している。
その他の全ての工事についても受注者に意向を確認し、希望があれば発注者指定として扱い、必要な費用の全額を設計変更により計上する。
また、日本建設業連合会は5月に行った関東地整との意見交換で「稼働中の原則全ての工事での遠隔臨場の導入を提案する」と要望。こうした業界の声を踏まえ、工期が十分に残っている工事であれば、稼働中の案件も含めて遠隔臨場の試行導入を働き掛けていく。
試行導入した工事では現場にアンケート調査を実施。回答を基に、遠隔臨場に特化したパッケージシステムやASP、ウェブ会議システムなど使用するツールの特性、効果、コストを検証していく。
提供:建通新聞社