厚生労働省東京労働局が6月に都内の建設工事785現場で集中的な現場指導を実施したところ、半数以上の444現場で法令違反を確認した。元方事業者の安全衛生管理面や墜落・転落防止に関わる違反が多く、59現場に作業停止命令などの行政処分を課した。一方で、現場管理者の多くが労働災害を巡って「危険意識の低下」や「作業の慣れ」を感じていることなどから、東京労働局では大手の建設業者や災害防止団体などに状況を説明し、改めて労働災害防止対策の徹底を促す。
集中的な現場指導は、建設業死亡災害の急増を踏まえて展開中の緊急対策(6〜7月)の一環として実施。例年約300〜400現場で行っている6月の指導よりも大幅に数を増やした。災害防止団体などに事前に周知して労働災害防止対策の徹底を促したこともあり、全体的な違反率は20年6月(434現場)の71・4%、19年6月(347現場)の69・2%を下回った。
違反の内容(重複あり)は▽元方事業者の安全衛生管理面=376現場(違反現場比84・7%)▽墜落・転落防止=267現場(60・1%)▽型枠支保工=77現場(17・3%)▽クレーン等=18現場(4・1%)―などに関するものだった。
集中的な現場指導では、労働災害の発生要因などに対する現場管理者の認識(重複あり)も確認。多くの現場管理者が「危険意識の低下」(263現場、指導現場比33・5%)や「作業の慣れ」(256現場、32・6%)、「高年齢労働者が多い」(140現場、17・8%)を挙げた。
また、新型コロナ感染症対策と安全衛生管理の両立に当たっては、「日々のコミュニケーションが不足」(248現場、31・6%)、「作業効率の低下」(158現場、20・1%)、「作業間の連絡調整が不足」(137現場、17・5%)などが課題だとした。
今年の建設業労働災害(6月末時点)の死亡者数は11人で、4月以降増えていない。休業4日以上を含む死傷者数は前年比9・5%増の440人となっている。
提供:建通新聞社