東京都水道局は小河内ダム(奥多摩湖)の総合的な予防保全計画の検討に乗り出す。経年による堤体や水路の劣化、激甚化する風水害に備えた流木・堆砂対策などへの対応と、将来にわたって運用を続けていくための方策を具体化し、2022年度末までに同計画を策定。23年度から順次、必要な対策を進めていく方針だ。これに伴う検討業務の委託先を決めるため、7月2日に希望制指名競争入札の手続きを開始した。土木・水系関係調査A等級の競争入札参加有資格者から7月8日まで希望申請を受け付けて、8月2日に開札する。22年3月25日を期限に成果をまとめてもらう。
小河内ダムは都心から約65`離れた奥多摩町の多摩川上流部に位置。堤高149b、堤頂長353bの非越流型直線重力式コンクリートダムで、1957年に完成した。貯水容量約1億8540万立方bを誇る国内最大級の水道専用貯水池で、「東京の水がめ」としての役割を果たすとともに、観光拠点の一つにもなっている。
耐震性には問題がないものの、経年による堤体と水路の劣化に加え、近年の豪雨や台風によって、予想を上回る土砂・倒木が流入するといった課題が顕在化している。また、気候変動の影響による大型台風で貯水池内に大量の濁水が流れ込んで残留したり、水温上昇によってアオコが発生したりして原水の水質悪化も起きている。
そこで小河内ダムの安全性と貯水機能を長期的に維持していくために、点検に基づいた補修や浚渫などに加え、効率的な施設運用を可能にする設備への更新なども含めた計画を策定し、総合的な予防保全事業を進める。
今回の委託では施設の予防保全に向けて、第1取水施設の改修方法(作用水深約100bでのバルブ改修を想定)や堤体ひび割れの補修工法、基礎排水孔の更新計画を検討。最新技術を導入した効率的な点検方法も考える。
また、今後の堆砂量を予測して短期と長期の堆砂対策を立案するとともに、土砂の有効活用策を調査する。短期の堆砂対策で貯砂ダムや陸上浚渫、貯水池上流部の排砂バイパスなど、長期の堆砂対策では貯水池中間部の排砂バイパスや水上浚渫などを想定している。
さらに、流木を効果的に除去・処分するため、流木引き上げ施設(荷揚げ場など)の整備位置や規模の概略を検討。短期間で効率的な除去・処分方法も比較検討して有力案を抽出する。
提供:建通新聞社