厚生労働省東京労働局は建設業死亡災害の急増を受けて、6月1日〜7月31日の2カ月にわたって緊急対策を実施することを決めた。原因の過半を占める「墜落、転落」の防止に重点を置き、パトロールや現場指導などを集中的に展開。建設業界をはじめとした関係方面に労働災害防止対策の徹底を強く求めて死亡災害の撲滅を目指す。併せて、パトロールで点検した現場の安全衛生管理状況などを整理して8月末にも公表する方針だ。
都内の建設業では今年の1月から5月19日までのおよそ4カ月半に11人が労働災害で死亡した。大規模建築工事現場での発生が多く、前年同期の6人からほぼ倍増。14人だった前の年(20年)の年間死亡者数に迫る勢いだ。
このうち「墜落、転落」での死亡は6人と過半を占め、2人にとどまっていた前の年の「墜落、転落」での年間死亡者数の3倍に上っている。
このため東京労働局は建設業死亡災害の撲滅に向けた緊急対策の実施を決定。同局や労働災害防止団体、元方事業者などの実施事項をまとめた要綱を作り、関係方面に対して5月25日付文書で要綱に基づき取り組むよう要請した。
要綱のうち東京労働局の実施事項は▽局長による大規模建築工事現場のパトロール▽建設工事に対する現場指導▽各労働基準監督署と建設業労働災害防止協会東京支部(建災防東京支部)の各分会による合同パトロール▽大手建設業者や公共工事発注者などとの連絡会議の開催―など。緊急対策の実施状況を確認するため、東京労働局の幹部と建災防東京支部による合同パトロールも行う。
一方で元方事業者には、店社による現場の集中的な安全総点検の実施や、現場の安全管理の強化と「墜落、転落」防止対策の徹底などを求めている。
5月28日の記者会見で緊急対策を発表した東京労働局の土田浩史局長は、「基本的な災害防止対策が十分に講じられていないのではないだろうか」と死亡災害の急増に懸念を表明。その上で、局長自らも赴くパトロールで「現場の状況をしっかり見ていきたい」と強調した。「墜落、転落」の防止対策だけでなく、熱中症対策の取り組み状況もチェックする考えも示した。
提供:建通新聞社