国土交通省関東地方整備局は、荒川第二・三調節池整備事業の対象エリア全体の3次元測量データ、CIMデータを5月末にも公開する。建設業界全体の生産性向上を先導するモデル事務所として、設計、施工だけでなく維持管理や広報など幅広い場面での活用を想定。事業を所管する荒川調節池工事事務所の武藤健治所長は「民間の新しい発想を掘り起こしたい」と述べ、公開データを通じてインフラ分野のデジタル化をさらに加速させる考えを示した。
荒川調節池工事事務所は荒川第二・三調節池整備事業の本格化に合わせて2020年度に設立された。今年2月には関東地方整備局が管内2カ所目のi−Constructionモデル事務所と位置付け、東京近郊の大規模現場として建設DX、新技術活用の「見本市」とする方針を表明。全ての設計をCIMで行うだけでなく、適用可能な現場については原則として全ての工事でICT施工を発注者指定で導入し、早期の事業完成を目指す。
このため、面積約760fに及ぶ調節池全体の地形や構造物の設計データをホームページ上で5月末にも公開し、誰でも利用できるようにする。高精細なデータを提供し、工事発注時の技術提案や、着工前の施工計画の検討にも活用できるようにする。また、景観の検討や、周辺住民などへの事業説明にも有効利用する。事業の進展に応じたデータの更新、拡充も検討していく。
本体工事の本格化は22年度を予定。3次元データを活用した遠隔施工、複数現場の連携など、施工のさらなる高度化も視野に入れている。
〈DX推進室を設置〉
さらに、同事務所は4月26日に所内へ「建設DX推進室」を設置。VR(仮想現実)ゴーグルで調節池の3次元データを体感したり、操作・活用方法に関するレクチャーを受けたりすることができるようにした。地方自治体の職員や地元建設業者がデジタル技術に触れられる場として提供し、建設DXの裾野を広げる。利用は事前申し込み制とする。
提供:建通新聞社