建設新聞社
2021/03/25
【東北・秋田】秋田県に1000床の特養建設/高齢者地方移住推進協議会が構造改革特区申請へ
高齢者地方移住推進協議会(那波三郎右衛門代表=那波商店代表取締役)は、秋田県内に延べ1000床の特別養護老人ホームを順次建設し、東京都から入居者を受け入れる構想で、国に構造改革特区を申請する。特区の実現の可能性は「1〜2割程度」(小野泰太郎幹事=小野建築研究所代表取締役)としているが、認められれば2022年度に初弾工事の設計と工事を行いたいとしている。23日に県庁で記者会見を開き明らかにした。
同協議会は、秋田県内14社で構成しており、秋田銀行、北都銀行、秋田信用金庫も参加。副代表は門脇木材の門脇桂孝代表取締役、事務局総括は社会福祉法人・正和会の佐藤亮事業管理部長が務める。秋田経済同友会、秋田県木材連合会、秋田県森林組合連合会が支援団体としてサポートする。
東京では、要介護者が加速度的に増加しているものの、土地の入手難と高い地価から施設整備が困難な状況。このため、東京都内の自治体が秋田県に施設を開設して都民が入居できるように、通常は都道府県ごとに策定している老人福祉計画を、県の垣根を越えて策定できるよう構造改革特区を申請する。
建設候補地は4万平方b程度。交通利便性があり自然が豊かで、面会者が利用できるような観光地や温泉が近い用地を想定しており、空港や新幹線による利便性から秋田市や仙北市を例に挙げた。
現在のところ、最大100床の特養を順次、設計・建設する想定で、事業主体となる法人は複数になる場合もあるとする。特養は通常、100床で延べ面積5000平方b程度であることから、全棟で延べ5万平方bを試算。平屋ないし2階建ての低層施設を設ける。秋田スギの活用も目指すとしており、全1000床で1万1500立方b程度の使用を見込む。
建設事業費は約170億円。建設費の補助は国と東京都の自治体から受ける。介護報酬も東京都の自治体から受け取る。施設運営による収入は約50〜54億円、日用品や食料品などによる経済波及効果は約70億円を試算。
事業主体となる法人の選定手法は未定だが、東京都が公募する場合や、委託業務を受ける場合などが考えられるとしている。
東京都の要介護高齢者が入居する場合のほか、CCRC構想で地方移住してきた元気な高齢者が要介護になった際に受け入れる場としての機能も見込む。また、県内居住者の入居も一定数可能にしたいとした。
今後、東京23区のニーズや事例の調査を進め、各区役所や都庁を訪問。プロモーション戦略の検討、基本構想や基本計画図の作成などを経て、9月20日に構造改革特区を申請する。認定が下りる場合は2022年3月ごろになるとしておりその後、建設地を抱える自治体から再度国に申請、これと並行して事業主体法人が初弾工事の予定地の造成や設計を進める。工事の発注は22年9月ころを想定している。
那波代表は「東京都への一極集中の弊害解消や、高齢者と若者が共にあるための方策として、自然の多い秋田県で、木材を多用した終の棲家(ついのすみか)の建設を考えた。地方と首都圏が共存できる社会を目指したい」と述べた。
提供:建設新聞社