北海道建設新聞社
2021/03/17
【北海道】道内で太陽光発電規制条例増加 地域との共存課題
道内で太陽光発電施設の建設を規制する条例を設ける市町村が増えている。長沼町やニセコ町、浜中町では4月から新たに規制を設ける考えだ。土砂災害の発生や景観への影響を懸念する地域の声が背景にある。一方で、太陽光発電などの再生可能エネルギーは脱炭素化に向け普及拡大が求められており、いかに地域と共存していくのかが課題となっている。
(建設・行政部 仲道梨花、苫小牧支社・塩原歩、釧路支社・坂本健次郎、空知支社・荒井園子、小樽支社・小田真沙樹、塚本遼平記者)
太陽光発電は、2012年7月から始まった固定価格買い取り制度をきっかけに拡大。道内の非住宅の太陽光発電設備容量は12年度時点で2万4000`hだったが、メガソーラーの建設が相次ぎ、18年度には136万7000`hにまで拡大した。道が見直している北海道省エネルギー・新エネルギー促進行動計画の素案では、30年度までに太陽光発電設備容量を210万`hまで引き上げる目標を掲げており、さらなる整備が進むと予想される。
一方で太陽光発電施設は、土砂災害の発生や景観への影響、濁水の発生、森林伐採による自然環境への影響などを懸念する声が多く、関係者間でトラブルに発展するケースが全国で発生している。道内でも同様の問題が生じており、一部の市町村では建設を規制する条例を設ける動きが出ている。
安平町は、20年12月に議会で太陽光発電施設の設置に関する条例を可決。出力10`h以上の太陽光発電について、事業者に条例順守や災害防止のほか、生活環境や景観、その他自然環境に十分配慮し、周辺関係者と良好な関係を保つことを責務として求めている。古平町や小樽市でも20年度から太陽光発電施設の建設に関して規制を設けた。
21年度から新たに規制する自治体もある。長沼町では、太陽光発電建設が相次ぎ環境悪化に悩む住民が増加したことから、町民有志が町長に対し規制条例の早期制定を求める署名を提出。地盤が弱い地域や農地、景観の良い丘陵地域などを対象に、事前協議や住民説明会の開催などを求めるガイドラインを策定する。
ニセコ町は、景観条例を改正する。新設や改築の際に事業内容や施工方法、景観への影響について町長との事前協議や住民説明会を求める「工作物」に「太陽電池発電設備」を明記した。浜中町は、再生可能エネルギー発電施設の設置に関する条例を制定。発電出力10`h以上の太陽光発電施設について、地滑り防止区域や急傾斜地崩壊危険区域などでの設置を制限する。
道の担当者は規制を設ける市町村が増えていることについて、関係者間でトラブルが発生していることや、20年度から国がメガソーラー新設時に環境影響評価の実施を義務付けたことなどが要因とみている。
道は50年温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボン北海道」を掲げた。目標達成のためには再生可能エネルギーの導入を飛躍的に高める必要があり、太陽光発電の整備も欠かせない。導入を加速していくためには、地域と丁寧に合意形成を図っていくことが求められている。