東京都は、都心の移動手段として需要が高まっている自転車の利便性向上に向けてシェアサイクルポートの整備を拡充するため、私有地にポートを設置した場合の税制優遇などインセンティブを検討している。3月10日に開いた東京都における地域公共交通の在り方検討会(座長・轟朝幸日本大学理工学部教授)で、都による取り組みの方向性を示した。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の普及拡大を見据えた自治体への支援など、2040年代に目指すべき地域公共交通の将来像をまとめる。
同検討会は、移動しやすい利便性の高い都市の実現に向け、区市町村や事業者に対して将来のビジョンと取り組みの方向性を示すとともに、地域公共交通の維持・確保・充実に関する支援策を構築することが目的。複数の区市町村に関連する交通課題を解決するため、広域的な視点から調整機能を果たす。
今回の議論では、都内の地域公共交通の課題と、これを解決するための都による取り組みの方向性を提示した。
都心では自転車の利用需要が高いことから、利用率の低い遊休駐車場≠ニなっている私有地などにシェアサイクルポートを設置する場合にインセンティブが働く優遇策を検討する方針を示した。
また、道路法や都市公園法では占有可能な物件にシェアサイクルポートが含まれていないことから、公共用地の有効活用に向け、必要な制度改正を国土交通省に要望していく。
MaaSの普及に向けては、各交通事業者が持つ時刻表や路線情報などのデータ連携が不可欠な一方で、交通事業者にとってデータは貴重な財産であるため、公開に慎重な事業者が多いという。また、データ連携の共通基盤がないことも課題となっている。
都としてはまず、行政が率先して取り組むため、コミュニティーバスなどのデータ化に取り組む区市町村を支援するとともに、交通事業者と行政が連携してデータを活用できる仕組みの構築を国交省に要望する考えだ。
検討会での成果は22年3月下旬ごろに「東京都における地域公共交通に関する基本方針(仮称)」としてまとめ公表する。
提供:建通新聞社