東京都は、地震、風水害、火山をはじめとした自然災害への防災対策をDX(デジタルトランスフォーメーション)で高度化する。ドローンを活用した被害調査や、ICTによる住家の被害認定、罹災証明の電子化、道路の3次元データによる維持管理の効率・迅速化など、平常時から発災時、復旧・復興までの各工程にデジタル技術を導入する。このほどまとめた「東京防災プラン2021」の素案に、DXに関する取り組みを盛り込んだ。
同プランは、防災分野のDX推進や、感染症と自然災害との複合災害への対応、近年の災害の教訓などを踏まえた防災対策の充実・強化などを目的に策定した。計画期間は2021〜23年度。
このうち、発災前の取り組みでは、道路管理を効率・迅速化できるよう、車載写真レーザー計測システム(MMS)やドローンなどを用いた3次元計測のデータにより、道路空間を3Dデータ化する。目視では分かりにくい建築限界侵害の防止や、構造物の変位の把握に生かす。
下水道では、市町村が管理する汚水管に雨水が誤って流入する雨天時進入水を防ぐため、下水道管内の水位情報をリアルタイムに測定できる多機能型マンホール蓋を設置する。測定結果を市町村と共有することで、原因調査や対策を促す。
また、下水道管内の詳細な映像を取得できるミラー方式カメラで得た情報を基に、損傷箇所や劣化度を自動で判定するシステムを構築し、管きょ劣化診断の精度を向上させる。
水道施設への備えも強化する。都内全体への普及を目指しているスマートメータを用いて、地震などで水道管継ぎ手部分が抜け出すことによる漏水を早期に検知し、効果的な復旧活動につなげる。
河川の対策では、監視カメラなどの増設により、雨量・水位・カメラ映像を総合的に表示し、ウェブサイトへの掲示や報道機関へ情報提供する。
発災時の対策では、赤外線カメラを搭載したドローンによる被災者捜索や被害状況の遠隔点検を行う他、危険な現場へのロボットの導入を進める。
震災後の2次被害を防ぐために、都立の建築物を応急危険度判定する際、現行の判定表を手書きからアプリに代え、判定業務を効率化する。
罹災証明書の交付に関する申請・調査・交付をはじめとした一連の業務も電子化する予定。被災した都民の生活再建支援を迅速に措置できる情報インフラの整備にも取り組む。併せて、区市町村の家屋の被害状況を中心としたデータを「災害時都民台帳システム(仮称)」に集約することで、都全体の被災状況を一元化。広域な支援や復興施策に生かす。
提供:建通新聞社