金沢市は、国内外から評価の高い著名建築家による現代公共建築をレガシー(遺産)として将来に継承するため、施設の長寿命化や建築的価値の維持に関するガイドラインを作成する。新年度当初予算案に事業費1000万円を盛り込んだ。
市所有の公共施設のうち、著名建築家が設計した建築的価値の高い現代建築を単なる施設の維持管理だけでなく、一つの建築作品として大切に保存し、まちの魅力を高めていくもの。新年度に開館10周年を迎える谷口吉生氏設計の鈴木大拙館は北陸新幹線開業以来、多くの観光客が訪れ、床などの傷みが想定以上に進行しているという。
ガイドラインの作成にあたっては、建築などの有識者による「(仮称)現代建築レガシー継承検討会」を設置する。谷口吉郎・吉生親子の唯一の共同作品で築42年の玉川図書館と鈴木大拙館では、施設の老朽度を調べる建物診断を行い、ガイドラインに反映していく。
玉川図書館は2019年にドコモモジャパンの「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定され、鈴木大拙館は昨年、「第33回村野藤吾賞」を受賞している。
対象施設はこのほか、市文化ホール(芦原義信氏氏、1952年築)、市立泉野図書館(岡田新一氏、82年築)、金沢21世紀美術館(SANAA、2004年築)、金沢海みらい図書館(シーラカンスK&H、11年築)、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(谷口吉生氏、19年築)―などとしている。