京都府は1日、北山エリア整備基本計画を発表した。
府は、昨年9月〜10月に基本計画(骨子案)のパブリックコメントを実施。意見提出は55人・142件あった。意見等を踏まえ基本計画をとりまとめた。
北は北山通、東は下鴨中通、南は府立大学の南側境界、西は賀茂川に囲まれた範囲を北山エリア(約38f)と設定。府立植物園、府立大学、府立京都学・歴彩館、府立陶板名画の庭のほか、京都市の京都コンサートホール等もある北山エリアの課題として、エリアの北東角に位置する旧府立総合資料館跡地の早急な整備、各施設が区切られた閉鎖的な空間で府民が往来しにくい状況、府立植物園の正門や観覧温室、府立大学の教育研究施設などエリア内の多くの施設が老朽化し、大規模改修や更新時期を迎えていること、エリア内の十分に活用できていない土地の他用途への転用等検討などを挙げた。
想定される主要施設は、@舞台芸術・視覚芸術拠点施設(シアターコンプレックス)A大学共同体育館(アリーナ)B植物園の3施設。
舞台芸術・視覚芸術拠点施設(シアターコンプレックス)は、老朽化の進む京都府立文化芸術会館(京都市上京区)及び昨年11月に閉館した京都こども文化会館(京都市上京区)の機能を継承するとともに、新たな文化芸術拠点と賑わい・交流の創出を目指す施設と位置付ける。主な想定諸室は、▽ホール機能(メインホール(舞台、客席500〜600席)、楽屋、調整室等)、楽屋口、搬入口、荷捌きスペース、倉庫等)▽展示機能(展示室(ギャラリー)、ホワイトキューブ等)▽創作機能(創作スペース・練習室、作業室等)▽交流機能(エントランス、ホワイエ、コミュニティスペース等)▽管理機能(施設管理者事務室、倉庫等)。
同施設を整備する府立総合資料館跡地は、北山エリアのエントランスにふさわしい「広場」機能を整備する。
府立大学は、既存分野に文理融合系等を加えた再編を行い、教育研究の更なる充実と地域に貢献できるキャンパス環境を創出する。
府立大学・府立医科大学・京都工芸繊維大学の3大学が共用予定の大学共同体育館(アリーナ)は、大規模災害発生時の周辺住民の避難や、災害復旧時の拠点としても使用できる設備を整える。主な想定諸室は、▽メインアリーナ(バスケットコート×3面、観客席約1万席程度(可動席・移動席含む)▽サブアリーナ(バスケットコート2面、武道場)▽その他(医務室、キッズルーム・授乳室、放送・音響・調光室、多目的室、トレーニング室、スポーツ・体力測定諸室、エントランスホール・ロビー、クラブボックス等)▽管理機能(事務室(施設管理室)、応接室(来賓室)、会議室等)。
再整備する植物園は、植物園の顔にふさわしい環境に調和したエントランスや、来場者が利用しやすく、動線に配慮した施設の整備・配置とする。また雨天時でも広場を使用できるように大屋根を整備する。
来園者のお土産等の購入を想定し、屋内外に商品等を展示できるような施設を整備する。来園者が観覧の合間に寛げるカフェ・レストラン、植物園の保管する資料や図書等を展示・閲覧できる施設、研究者や府民、学生の教育・研究などの交流の場となるように研究室、研修室や多目的室等を整備。老朽化が深刻な観覧温室は建替又は改修を行う。主な想定諸室は▽来園者サービス機能向上(インフォメーションセンター、ビジターセンター、正門エントランス、大屋根広場(雨天時対策)等▽アミューズメント機能向上(ミュージアムショップ、ボタニカルショップ、カフェ・レストラン、ホール等)▽教育・研究機能向上(植物標本庫、常設展示室、図書コーナー、研究室、研修室、多目的室等)▽観覧温室建替え又は改修(観覧温室、機械室、バックヤード等)▽管理機能(事務室、会議室、倉庫等)。
その他の府民利用施設以外の施設は、その機能や利用状況を踏まえ、類似機能の集約、共同利用、エリア外の適所への移転等を検討し、他用途へ転換することにより、他施設と連携して北山エリアの魅力を高める機能を持たせることを検討する。
北山エリアの整備においては、設計、施工、運営をそれぞれ個別に発注する従来の公共工事の手法だけでなく、官民連携手法(PPP)の活用も想定し、各施設の態様に合わせて最適な手法の選択を検討する。
整備スケジュール《=表参照》によると、舞台芸術・視覚芸術拠点施設(シアターコンプレックス)は、公募準備を経て、令和3〜4年度にかけて事業者公募を行い、令和4〜5年度にかけて解体工事、令和6〜7年度に埋蔵文化財調査を行った後、令和7〜9年度に建設工事を実施し、令和9年度中の供用開始を目指す。
大学共同体育館(アリーナ)は、公募準備を経て、令和3〜4年度にかけて事業者公募を行い、令和4年度に解体工事、令和4〜5年度に埋蔵文化財調査を行った後、令和5〜6年度に建設工事を実施し、令和6年度中の供用開始を目指す。
植物園は、公募準備を経て、令和3〜4年度にかけて事業者公募を行い、令和4〜5年度に解体工事を行った後、令和5〜7年度に建設工事を実施し、令和7年度中の供用開始を目指す。
民間事業者の公募時期は、新型コロナウイルス感染症等の影響を鑑み、社会経済情勢を踏まえて対応する。
エリア全体では、北山通から府立大学につながる南北軸、賀茂川から下鴨中通につながる東西軸など、エリア全体の回遊性を高める動線の整備、植物園を中心に周辺施設がスムーズにつながり、ハード・ソフト両面での連携が可能となるような動線等の整備を行う。
また北山エリアの将来像の実現に向け、都市計画の側面からも必要な施策を検討する。北山エリアの用途地域は第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)。高度地区は20m第1種高度地区(植物園の部分は12m第1種高度地区)。そのほか、山並み背景型建造物修景地区(植物園の部分は風致地区第4種地域、北山通沿道は沿道型美観形成地区)等。
なお北山エリア整備基本計画策定業務は有限責任あずさ監査法人(東京都新宿区)が担当。
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府は、令和3年度当初予算案に新規で北山エリア整備推進事業費1000万円規模を計上。北山エリア整備基本計画に基づく整備に向けた事業スキーム等の検討に入る。
また、新規で新生・府立大学構想策定費に1000万円規模を計上。新たな教育研究体制の具体化に向けた調査・検討を進める。別途、耐震度が著しく低い4号館の解体工事にも着手する。