大阪・ミナミの地価下落が鮮明に―。国税庁は、2020年7月1日に公表した同年1月時点の路線価について、「大阪市中央区心斎橋筋2丁目」など大阪・ミナミの3地点を減額補正すると発表した。減額補正を行うのは1955年の制度開始以来、大規模災害時を除いて初めてとなる。新型コロナウイルス感染症拡大によるインバウンドの減少などの影響を受け、20%を超える幅で地価が大きく下落、路線価を下回ることが確認されたため。ミナミでは3地点以外でも15%を超える下落率を確認している6地点で今後、路線価を減額補正する可能性があるとしている。公表は4月の予定だ。
今回、減額補正するのは大阪市中央区の心斎橋筋2丁目、宗右衛門町、道頓堀1丁目の3地点。
地価変動補正率は0・96。改正後の路線価は心斎橋筋2丁目が2065万9000円(2020年分路線価2152万円)、宗右衛門町が2003万5000円(同2087万円)、道頓堀1丁目が1790万4000円(同1865万円)となる。
20年7月1日に公表した路線価では、道頓堀川に面した戎橋ビル前の大阪市中央区心斎橋筋2丁目の対前年度変動率が44・6%の急上昇を見せていたが、評価時点が同年1月1日だったことで、新型コロナの影響が反映されていなかった。路線価は地価の80%程度に設定されることもあり、3地点は20年1月以降9月末で地価が23%下落したため修正する。
ミナミでは、同じく9月末で地価が15%以上下落した地点が6カ所ある。千日前1・2丁目、道頓堀2丁目、難波1・3丁目で19%、難波千日前、日本橋1・2丁目、南船場3丁目で17%下落しており、20年10〜12月分の状況次第で今後、6地点の路線価についても減額補正する可能性があるとしている。
地価の「高止まり」がトレンドだったミナミエリアは、新型コロナの拡大以降、インバウンドのにぎわいがほぼなくなり、店舗やドラッグストアを中心に閉鎖や間引き、集約に追い込まれたところもある。トレンドは「インバウンドの影響を受けて、急激に下がった」と一気に転換した。
大阪府不動産鑑定士協会の関野肇会長は「路線価を減額補正したミナミの3地点は20年1月1日時点で地価が大幅に上昇したところが急激に下落した特異な地点だと思う。今回の国税庁の措置は適切だった」と評価。次の20年10〜12月分も「補正する可能性がある」と指摘し、「21年1月1日時点の標準地1平方b当たりの価格を示す3月公表の公示地価の値をめどに20%以上の下落、路線価を下回っている地点でまた調整がされていくのではないか」とみる。
提供:建通新聞社