北海道建設新聞社
2021/01/20
【北海道】道内でサテライトオフィス誘致が加速
道内でサテライトオフィスの誘致に向けた取り組みが加速している。札幌市や旭川市、沼田町は2020年度に拠点開設費や調査費などを一部支援する補助制度を創設した。室蘭市や美瑛町などでは、自治体がサテライトオフィスを整備し、積極的な誘致を進めている。地域活性化や雇用創出につながると期待されるサテライトオフィスの開設。新たなビジネスチャンスにつなげられるか、注目される。(建設・行政部 仲道梨花、佐藤朋紀、旭川支社・五十嵐亘、沓沢奈美、千葉有羽太、室蘭支局・高橋秀一朗、空知支社・鈴木穂乃花、北見支社・板垣達也)
総務省の調査によると、19年度末までに道内で開設されたサテライトオフィスは74カ所と全国で最多となった。首都圏との同時被災リスクの低さなどから人気が高い。新型コロナウイルス感染拡大が追い風となり、東京など都市部では場所にとらわれない働き方への関心がさらに高まっている。
■補助制度の創設で誘致強化
道内市町村でも、都市部での動きを踏まえて積極的な誘致に乗り出している。札幌市は、ビルの新築や建て替えを補助するオフィスビル建設促進補助金を新設。申請を視野に入れた相談が4件あった。旭川市は、拠点開設に向けた活動を支援する立地環境調査支援補助金を創設。拠点開設に向けた現地調査などにかかる旅費や滞在費、イベント開催経費を補助する。東京などの7社から応募があった。
沼田町は、事務用品や移動車両レンタル費用などを一部補助するサテライトオフィス設置促進事業補助金を新設した。また、北海学園大の学生が空き家を移住定住促進施設としてリノベーションする活動を実施している。20年には旧厚生病院医院長宅を改修し、サテライトオフィスとして開設。東京の企業など4社がテレワークや営業拠点として利用している。
遠軽町は、20年度から「スローライフ等応援事業」に取り組む。移住や企業のサテライトオフィス立地を積極的に受け入れるため、環境整備費や事業所整備を補助する。
■自治体が拠点整備で誘致促進
自治体がオフィスを整備し、誘致を進める事例も多い。室蘭市では、20年8月に室蘭テクノセンター内にサテライトオフィスを設置し、10月までに10社が利用した。同市は「室蘭には室蘭工大があり、専門分野での共同研究や学生のリクルートにメリットがある」と優位性をPRする。
美瑛町は、丘のまち交流館ビ・エールにワーキングスペースを設け、自由に使える空間としたほか、町の病院職員が居住していた戸建て住宅を住居兼オフィスとして使用する「幸町体験住宅」を設置。京都のNPO法人や東京の福祉関係者、アニメ製作業者などが利用した。このほかにも、北見市や下川町など全道各地でサテライトオフィスが整備されており、多くの道外企業が利用している。
道経済部の担当者は、季節限定のテレワークやワーケーション拠点としての利用も多いとして「地域で雇用を生むためにも常設オフィスの設置や企業誘致につなげたい」と話す。企業誘致を実現するために、道内企業との連携や人材確保の支援が必要との認識を示した。
冷涼な気候やオフィス賃料が低く、IT関連人材が確保しやすいなど全国の中でも高いポテンシャルを持つ本道。新型コロナウイルスの影響で広がった新たなニーズを取り込むことができるのか、期待がかかる。