国土交通省近畿地方整備局は、総合評価落札方式による入札契約の新たな取り組みとして、品確法の改正を踏まえた技術提案の指定テーマ設定を試行する方針を示した。技術提案評価型(ST型、SU型)で入札参加者から出される最大四つの提案のうち、1提案を「情報通信技術の活用等による生産性向上の提案」「公共構造物の維持管理についての容易性」のいずれかを求める。一般土木、PC、鋼橋上部のWTO対象案件のうち、各工種で2工事程度を試行する予定だ。2021年4月から入札契約手続きに入る工事が対象となる。合わせて企業チャレンジ型の受注機会促進型への統合、若手・女性チャレンジ型の競争参加要件の緩和、施工能力評価型の評価基準見直しも行う。
指定テーマ設定の試行は品確法の改正で、発注者・受注者の責務として「情報通信技術の活用等による生産性向上」、国の責務として「公共工事の目的物の適切な維持管理に取り組むこと」が規定されたことを受けた対応。WTO対象の3工種での試行を目指す。段階的選抜方式で発注される工事は指定テーマ1が対象となる。
この他の新たな取り組みでは、新規参入者の受注機会拡大を目的に、企業チャレンジ型を受注機会促進型に統合する。現行のチャレンジ型にある企業評価や技術者評価を行わず、工事の手持ち額の少ない者を加点する「工事の手持ち状況」の評価を最大5点とし、施工計画を15点の評価とする受注機会促進型の試行工事を行う。対象は、比較的工事難易度の低いT〜Uの工事で、分任官の一般土木や舗装などで各事務所1〜2件程度となる予定。手持ち工事を直轄工事に限定するかも今後検討する。
若手・女性チャレンジ型については、企業の施工能力の配点(現行は最大25点)を同種性の高い施工実績や工事成績の最大10点に抑え、「40歳以下または女性の監理(主任)技術者を配置」の技術者評価を最大15点(現行は10点)に拡大、同種工事の施工経験も問わないことで、より入札参加しやすい環境を整備する。同チャレンジ型は年間10数件の発注があるという。
この他、総合評価における評価基準も一部で見直す。施工能力評価型で、災害活動に対する表彰を「工事発注府県内または近畿地方整備局管内で発生した災害が対象」から「全国の行政機関から表彰された実績が対象」に変更。近畿圏以外で活動した企業にもインセンティブを付ける。また、不調不落対策として「社会条件に配慮した工事の実績」に応じて加点(最大3点)している「社会条件評価」を標準項目として新設。地域課題に合う評価枠を設定し、独自の取り組みを評価する「自由枠」も追加する。
12月23日に開かれた2020年度第2回総合評価委員会で、溝口宏樹局長は「公共事業の品質確保が求められる中で、しっかりとした技術を持ち、災害対応にも当たる地域の建設業者らの育成にもつながる入札契約制度を工夫したい」とあいさつ。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が12月に閣議決定し、今後多くの工事の発注が見込まれることもあり、地域企業の新規参入や若手・女性技術者の活用がさらに進む入札・契約制度に改善していく考えを示した。
提供:建通新聞社