川崎市は、2020年度中に都市計画決定など事業の推進に重要な手続きを行わなければならない大規模投資事業について、20年度中に手続きを実施することの可否を改めて検討することになった。対象は、JR南武線連続立体交差事業の都市計画決定、京浜急行大師線連続立体交差事業1期A区間の工事着手、等々力緑地再編整備事業の実施計画改定手続き。これらの事業は、財源や人的資源の負担が大きく、今後の社会変容をはじめ、社会経済の動向、市民ニーズの変化を踏まえた慎重な検討を行うとともに、新型コロナ感染症拡大の新たな視点による検討が必要なため。各事業を取り扱う庁内の会議体で検討を進め、20年度にそれぞれの手続きなどについて判断し、その結果を次期市議会で報告するとともに、公表する。
今回の検討対象外となった大規模投資事業は、▽臨港道路東扇島水江町線▽国道357号多摩川トンネル▽川崎縦貫道路▽浮島処理センター基幹的施設▽橘処理センター▽堤根処理センター▽新本庁舎▽横浜市高速鉄道3号線延伸▽新川崎小学校整備。
JR南武線の連続立体交差事業は、尻手駅から武蔵小杉駅までの区間、延長約5・5`を対象に検討しているもので、このうち川崎市内は矢向駅〜武蔵小杉間(約4・5`)を「仮線高架」形式にする方針。道路整備を含めた総事業費は約1480億円(連続立体化本体は1185憶円)。事業期間は用地買収を含めるとおよそ20年程度。これまで20年度中の都市計画決定を目指してきた。
しかし、市では社会経済状況に見通しが立たない中、長期にわたり財源や人的資源の面で負担が大きいことから今後の社会経済の動向を踏まえると、現行計画に基づき、20年度中に都市計画決定を行うことには慎重な検討と判断を行うための時間を確保する必要があるという。
今後の状況を踏まえた判断について現時点では、社会経済への影響の大きさは見通しが立たない状況のため、引き続き社会経済の動向、事業財政運営の見通しなどを分析しながら丁寧に検討していくとしている。
京浜急行大師線連続立体交差事業は、踏切を一度に除却し、踏切事故と交通渋滞を解消しようというもので、1期@区間(小島新田駅〜東門前駅)は19年3月に運行を開始。1期A区間(鈴木町〜東門前)の一部では仮線工法を採用し、仮線に運行を切り替えて現位置を掘削する計画。
また、21年6月の改定を目指す「等々力緑地再編整備実施計画」では、等々力陸上競技場など主要施設の整備の方向性、配置、整備手順などを定める。再編整備に当たっては、東急がPFI法に基づき、等々力陸上競技場サイド・バックスタンドの全面改築、とどろきアリーナの民設民営化、市民ミュージアムの再整備(公文書館やアリーナの体育室、会館とどろきを含めて陸上競技場内への複合整備)などを複数年のPFI事業として提案しており、市は「等々力緑地再編整備計画推進委員会」の中で、提案の実現可能性などを検証中。21年3月に「民間活力導入方針案」を公表し、方向性を示すとしていた。
提供:建通新聞社