東京都都市整備局は、都市計画の基本的な方針となる「都市計画区域の整備、開発、保全の方針(都市計画区域マスタープラン)」の改定案に、コロナ禍を踏まえた都市づくりの方向性を追加した。緑豊かなオープンスペースの創出や、オフィスビルへのゆとりある共用空間の整備などを促す。目標年次はおおむね20年後の2040年代に設定。改定案を21年2月3日に開く都市計画審議会に付議する。
マスタープランは、都が長期的な都市の将来像を明確にし、実現に向けた大まかな道筋を示すもの。区市町村が定める都市計画マスタープランのベースとなる。今年5月に原案をまとめた後、新型コロナウイルス感染症に伴う社会状況の変化を踏まえた都市づくりの方向性も新たに追記した。
改定案では、都市づくりの目標・戦略に、AIやIoTなどの最先端技術を活用しながら「ゼロエミッション東京」を目指すことや、国際競争力を高める「ESG(環境・社会・ガバナンス)」「SDGs(持続可能な開発目標)」の概念を取り入れた街づくりを実現することを掲げた。
加えて、コロナ禍による社会の変化に対応するため、三つの密を回避し、新しい日常≠ノも対応する都市づくりの実現を目指す。国際競争力を高める拠点を形成するとともに、多様な住まい方・働き方・憩い方を選択できる都市づくりを推進する。
具体的には、都心部のオフィスでは、感染症にも配慮したゆとりある共用スペースなどを備えた職場への機能更新を促す。また、既存の中小オフィスビルを生かし、リノベーションやニーズに応じた用途転換も加速させる。
この他、土地利用に関する方向性としては、「国際ビジネス交流ゾーン」に国際水準の住宅やサービスアパートメントの整備を誘導するなど、地域特性に合った拠点を育てる。「多摩イノベーション交流ゾーン」には大学周辺の住宅市街地に研究施設の立地を誘導し、複合的な土地利用を図る。
都市施設の整備に関しては、羽田空港のさらなる機能強化を国に継続して求める。また、道路では「晴海V期」をはじめとする未開通区間の解消や、広域的な連携・交流を促す路線の検討を進める。鉄軌道は、国の答申で「検討などを進めるべき」とされた路線について関係者との協議・調整を加速する。
提供:建通新聞社