京都府は27日、令和3年度から12年度までの今後10年間の流域下水道事業経営戦略(中間案)を明らかにした。
同日開催の京都府流域下水道事業経営審議会(会長・田中宏明京都大学大学院流域圏総合環境質研究センター長)で、京都府建設交通部の富山英範部長は、いろは呑龍トンネルの工事進捗に触れた後、「新名神高速道路の整備により、都市開発が進む府南部地域では汚水量が増えてくるため、更なる投資が必要になる」「全国共通の課題として、下水道施設の老朽化が進んでおり、計画的に進めていく必要があり、投資部会でで投資戦略を検討している。一方で収益的収支の赤字などの課題があり、財政部会で市町の負担金も見直しを検討すべきとの意見をいただいた」などと述べた。
経営戦略(中間案)によると、投資関係では雨水対策は、いろは呑龍トンネルを推進。桂川右岸流域でポンプ場整備・調整池・公共下水道接続施設(残り約38億円)を予定。
施設増設は、新名神高速道路や学研都市関連の開発に伴う汚水量増加に対応するため、汚水処理施設の増設を推進。木津川流域で水処理施設E1系(残り約50億円)、水処理施設E2系(約70億円)、関連施設(急速ろ過・消化タンク・機械濃縮機等で約50億円)、木津川上流流域で水処理施設7系(機械電気設備)(約10億円)を予定。また災害時のリダンダンシー確保のため、圧送管の二条化を推進し、宮津湾流域で宮津幹線の管渠二条化(約5億円)を予定。
洛南浄化センターについては「逼迫する水処理能力を増強するとともに、対応が遅れている老朽化対策を速やかに実施することが喫緊の課題。高度処理の位置付けもあり速やかに実施していく必要がある。これらの課題への対応を踏まえると、速やかにE2系を増設することが望ましい」とE2系増設に着手する必要性が高いとした。令和5〜9年度に増設予定。
改築更新等(耐震・耐水化含む)は、ストックマネジメント計画に基づき、優先度の高い施設から計画的に更新工事を実施。耐震化は各処理場で簡易放流できる1ラインは概ね確保済みのため、今後は改築更新に合わせた耐震補強を行うなど効率的な耐震化を実施。耐水化は処理場の対策が概ね完了しており、今後は中継ポンプ場で必要な対策を講じる。
主要箇所をみると、桂川右岸流域において10年間で約255億円を投入。水処理施設のB1・B2系(設備更新、躯体耐震化)、汚泥処理施設の汚泥濃縮棟・消化タンク(設備更新、躯体耐震化)を予定。
木津川流域において10年間で約205億円を投入。水処理施設のB系・D系(設備更新)、汚泥処理施設の消化ガス発電・汚泥乾燥・脱水設備(設備更新)、中継ポンプ場の山城中継ポンプ場(耐水化)を予定。木津川上流流域において10年間で約80億円を投入。水処理施設の1・2系(設備更新)、汚泥処理施設の汚泥脱水機・ボイラー設備(設備更新)、第1ポンプ棟(設備更新・躯体耐震化)を予定。宮津湾流域において10年間で約40億円を投入。水処理施設の沈砂池設備(設備更新)、汚泥処理施設の汚泥脱水設備(設備更新)、中継ポンプ場の獅子崎・鶴賀・須津・堂谷・四辻中継ポンプ場(設備更新)を予定。
持続的経営に向けた検討では、汚泥処理利用は安定処理・コスト縮減・有効利用を念頭に施設整備について検討。広域化・共同化は府内市町も含めた持続可能な事業運営に向け、集約処理、維持管理業務の共同化等を検討。雨天時浸入水対策は発生源対策と既存施設の有効活用を推進。省エネルギー対策は設備更新時に省エネ設備導入を推進し、維持管理費の削減を図る。新技術導入は各処理場の課題に対応した新技術の導入を設備更新等の時期に合わせて検討。執行体制・技術力活用は人員や技術力の確保に努めるとともに、民間事業者等を活用しながら、安定した事業運営を図る。
今後必要な投資額の見通し案については、毎年概ね82億円(令和2年度当初予算と同規模)とし、また維持管理費として概ね57〜60億円が必要とした。
令和4年度までは雨水対策及び施設増設に重点配分し、早期の効果発現を図る。改築更新は、木津川流域のE1系完成後(令和5年度以降)に本格的に実施し、10年間で約580億円(58億円×10年)を確保して、リスクの低減を図る。
投資・財政計画(収支計画)の資本的支出の建設改良費は、令和3年度…78億8553万2000円(うち職員給与費2億6618万4000円。以下、同額)、令和4年度…79億2593万2000円、令和5年度…79億0857万8000円、令和6年度…79億9856万円、令和7年度…79億1546万5000円、令和8年度…79億2446万3000円、令和9年度…79億6100万7000円、令和10年度…77億9343万8000円、令和11年度…77億3173万7000円、令和12年度…77億9903万9000円。なお令和2年度は74億1609万9000円(うち職員給与費2億6275万2000円)。
中間案は今後パブリックコメントを年内から年明けにかけて実施。令和3年1〜2月頃開催の第3回審議会で最終案を示し、年度内に策定・公表する予定。