蒲島郁夫知事は19日、7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、流水型ダムの建設を国に要望していく考えを示した。大雨時以外はそのまま水を流す穴あきダムを採用することで、環境への負荷を低減させ、「命と環境の両立」を目指す方針。19日の県議会全員協議会で明らかにした。
治水の方向性で蒲島知事は「これまでのダムか非ダムかという対立を越えた結論が必要」とし、遊水地活用や森林整備、避難体制強化など流域全体の総合力で安全安心を実現していく「緑の流域治水」を目指すとした。
ダムについては「特定多目的ダム法に基づく現行の貯留型川辺川ダム計画の完全な廃止を国に求める。その上で、緑の流域治水の一つとして、住民の命を守り、さらに地域の宝である清流をも守る新たな流水型のダムを国に求めることを表明する」と話した。
ダム以外の治水対策については「早急に行うべき事業は躊躇することなく、重点的かつ確実に実施する」と説明。年度内の早い時期に緊急治水対策プロジェクトを策定し、支川を含む河床掘削、堤防・遊水地整備、宅地かさ上げ、高台移転、砂防・治山事業などを徹底して行うとした。さらに客観的・科学的な環境影響評価が必要として、環境アセスメントの実施も国に要望していく。
7月豪雨では、球磨川上・中流部や川辺川で観測以来最大の雨量を記録し、人吉市部などで甚大な被害が発生。豪雨検証委員会は、川辺川ダムが仮に存在した場合の効果について「すべての被害を防ぐことはできないが、人吉区間で浸水範囲を約6割減少できた」と報告した。その後、知事自ら流域住民や関係団体・流域首長・専門家等に意見を聴取。知事の最終判断に注目が集まっていた。
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