国の財政について審議を行う財務大臣の諮問機関の財政制度等審議会が「社会資本は概成しつつある」「建設業界には施工余力はない」という、業界からみて誤った認識に対する是正を求めるなど、(一社)千葉県建設業協会(畔蒜毅会長)は、今月6日に森田健作知事及び橋渡副知事、穴澤幸男・県農林水産部長、河南正幸・県県土整備部長、自由民主党千葉県支部連合会らに「要望書」を提出した。同じく11日には、東京・永田町の衆議院第一及び第二議員会館と参議院議員会館を訪ね、千葉県選出の国会議員にも、同様の要望書を手渡す。
「社会資本は概成」にも疑問符
建設業界を取り巻く状況は、国の強靭化緊急対策や、公共工事設計労務単価の8年連続での引き上げなどから、公共投資予算に改善の兆しが表れていた。しかし、事業量の偏りからくる地域間格差や、大企業と中小建設業との企業間格差が拡大。地域の社会資本整備や維持管理、災害対応を担う地域建設業は、依然として厳しい経営環境に置かれている。
一方で、毎年のように豪雨、台風の襲来、地震、火山噴火等の大規模災害が発生し、その被害は激甚化。千葉県でも昨年、続けざまに3度の台風に襲われ、甚大な被害に見舞われたことは記憶に新しい。
(一社)千葉県建設業協会では従来から、これらの自然災害への防災・減災対策を最優先かつ喫緊の課題と捉え、国土強靭化に資する社会資本整備の重要性と緊急性を訴えてきた。
人手不足で施工不能や遅延現場なし
ここに来て、財務省の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会歳出改革部会が、2021年度の予算編成に向け「社会資本は概成しつつある」「人手不足により足元の建設労働需給がひっ迫し、建設業界には施工余力がない」との認識をベースに、公共予算拡大に難色を示した。
これに対して(一社)千葉県建設業協会は、「本県では人手不足が原因で施工不能や遅延した現場はなく、施工余力に問題はない」と強く反論。「発注して頂ければ、しっかりと受注してまいる所存であり、地域の建設業にとっては、公共事業予算の縮小により発注がなくなることが問題である」と強調。
加えて、前述の通り、近年は気候変動による大規模災害が頻発。今年も、全国各地で人命・財産を奪う災害に見舞われていることに言及。「この事実を目の当たりにしながら、財政審の部会で『社会資本は概成しつつある』との論調がなされることが、何を根拠としているのか疑問でならない」と改めて指摘した。
要因は実勢価格と予定価格の乖離に
他方、国土交通省によると、2019年度の都道府県の工事不調・不落率は約7・5%で、前年度より1ポイント上昇したという。これに対して、千建協では「技能労働者が不足していることが要因ではなく、実勢価格と予定価格が乖離していることから、利益率を考慮して応札しない企業が多いことに他ならない」と指摘。
今年度で最終年度を迎える「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」の終了後については「中長期的視点に立ち、『国土強靭化対策』をさらに充実した計画及び予算とすることが必要不可欠である」と主張。
さらに、地域建設業が「地域の安全・安心の担い手」として、「災害時の応急対応」などに当たる体制を維持し、社会的使命を果たしていくためには「何より健全で安定した経営を確保・継続する必要があり、そのための安定的・持続的な事業量の確保が必要不可欠である」と訴えた。
要望事項
○財政制度等審議会の「社会資本は概成しつつある」「建設業界には施工余力はない」といった認識が誤ったものであることへの理解
○「防災・減災、国土強靭化緊急対策」の来年度以降の継続当初予算での特別枠の確保
○公共事業予算の継続的確保