球磨川豪雨検証委員会の第2回会合が6日、県庁であった。川辺川ダムが仮に存在した場合の効果について九州地方整備局は、すべての被害を防ぐことはできないものの、全川的に水位が低下すると推定。青井阿蘇神社付近や川辺川では浸水は解消されると報告した。検証委は今回で終了。蒲島郁夫知事と九州地整の村山一弥局長は、新たな協議の場を早急に設置し、治水対策の検討を急ぐ考えを示した。
検証委は、球磨川の大規模氾濫を調査し、持続可能な地域の再生に繋げようと、国、県、流域12市町村で設置。前回8月の会合で九州地整は、人吉地点の流量を推定し、川辺川ダムの存在で流量の低減が可能だったとする速報値を示していた。
今回は、人吉地点の詳細な流量に加え、他地点の流量、川辺川ダムがあった場合の評価や各地点の水位・浸水面積などを明らかにした。
ダムが存在した場合の効果については、人吉地点のピーク流量を7月豪雨の毎秒約7400立方bから約4800立方bに低減できることを確認。計画高水流量の約4000立方bは上回るものの、「ダムによらない治水を検討する場」での対策や「球磨川流域治水対策協議会」で検討した対策を実施した場合より、低減効果は大きいとした。
ダムがあった場合の河道の水位は、人吉市街部で約1・9b、相良村柳瀬地区で約2・1b、球磨村渡地区で約1・7b、芦北町白石地区で約1・5b、八代市坂本地区で約1・2b低減できると算定。人吉区間の浸水シミュレーションでは浸水面積が約6割減り、さらに浸水深3b超の範囲は約9割減少する結果となった。
一方で、現行の川辺川ダム計画だけでは、すべての被害を防ぐことはできないと結論付けた。
流域の自治体からは、「人の命を救うためにあらゆる方法を検討していくべき」(芦北町)、「流域が安心して過ごせるような方向性を早急に示してほしい」(人吉市)、「上流部で治水対策が先行した場合に、中流域では水位が上昇するのでは」(球磨村)、「(現行ダム計画の)利水容量を洪水調整用に加えては」(あさぎり町)―などの意見があった。
蒲島知事は「球磨川流域の復旧・復興を進める上では、治水の方向性を定めることが大前提となる。今回の検証結果を踏まえ、国・流域市町村と連携しながら時間的緊迫性を持って、治水の方向性を検討したい」と話した。さらに、検討中でも掘削など緊急に実施すべき事業は躊躇なく進めていくとした。村山局長は、新たな協議会を立ち上げ、ハード・ソフト一体の対策を流域全体で進めていく方針を示した。
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