令和2年度近畿ブロック会議が8日、神戸市中央区のANAクラウンプラザホテル神戸で開催。近畿建設業団体協議会は、国土交通省に対し、民間発注工事を含めた適正工期の設定や、発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)の徹底などを要望した。
近畿ブロック会議には、国土交通省から天河宏文不動産・建設経済局官房審議官、東川直正大臣官房技術審議官、鎌原宜文不動産・建設経済局建設業課長、井上圭介大臣官房・技術調査課建設技術調整室長、野口知希不動産・建設経済局建設市場整備課建設キャリアアップシステム推進室長、国土交通省近畿地方整備局から溝口宏樹局長、中島正人副局長、池口正晃企画部長、伊藤康行建政部長、増田安弘企画部技術調整管理官、田中徹企画部技術開発調整官、谷正人建政部建設産業調整官らが出席した。
一般社団法人全国建設業協会から奥村太加典会長ら、一般社団法人滋賀県建設業協会から桑原勝良会長、奥田克実副会長、湯本聡副会長、谷節雄副会長、内田美千男副会長、坂雄三専務理事、吉川勝事務局長、一般社団法人京都府建設業協会から小ア学会長、吉村良一副会長、三輪泰之副会長、上島竜太郎副会長、山内基義副会長、中村敬二専務理事、西靖彦事務局次長らが出席。このほか西日本建設業保証梶A一般財団法人建設業振興基金などから担当者が出席した。
近畿建設業団体協議会幹事協会の一般社団法人兵庫県建設業協会の松田驩長が冒頭挨拶し、「毎年大きな自然災害が発生している。今年も令和2年7月豪雨、台風10号などにより、広い範囲で大きな被害が出ている。このような被害を少なくするために、防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策の継続を含め、継続的、計画的かつ十分な防災事業の実施をお願いします。将来にわたって我々建設業が継続的にその役割を果たしていくためには、建設業者の経営が安定し続けなければなりません。工事を受注しても関係機関との協議が未了のまま、あるいは設計が不十分でそのまま工事にかかれず一時中止になる例が少なからずあります。建設業者の技術者を効率的に活用して、次の受注に向かうという受注計画、経営計画が大きく狂い、経営を圧迫します。一時中止の間の経費をみていただくことは当然であり、それが我々の第一の願いでもある。受注すれば速やかに、中断することなく、予定の期間で終えて、次の活動に移るというのが望みです」「技能労働者の処遇の改善等を目指して建設キャリアアップシステムがスタートしました。官民一体のシステムではありますが、国土交通省様におかれましては、責任をもってこのシステムを成功させるという強い姿勢で業界をリードしていただきたい」と訴えた。
国交省の天河官房審議官は「地域の建設業が将来にわたって発展し、その社会的使命を的確に果たしていけるよう、新担い手3法を踏まえ、担い手の確保・育成、建設業の生産性向上、働き方改革の推進等に取り組んでいる」「建設キャリアアップシステムは、建設産業の中長期的な発展に不可欠であり、将来にわたって安定的に運営されるよう、最大限の努力をする」「令和3年度国土交通省予算の概算要求では、防災・減災、国土強靱化等の強力な推進のため、必要かつ重要な公共事業予算の安定的・持続的確保に向け、しっかりと取り組む」、溝口近畿地整局長は「地域の建設業の皆様は、暮らしを支えるインフラ整備、維持管理、災害時の対応など、私たちのパートナーとして将来の長きにわたって、その一翼を担っていただかなければなりません。なくてはならない存在です」「近畿地整では、工事の特性も踏まえながら、地元建設業の担い手確保、受注機会の拡大のために企業チャレンジ型の試行工事などを積極的に行っている。様々な発注の仕方や入札・契約などで工夫をしている。今後とも建設業の皆様の声をしっかりお聞きしながら、更なる工夫を重ねていきたい。若い人も含めて、より一層、魅力ある仕事、職場環境になるよう、発注者としても適正な利潤、施工時期の平準化などにも留意しながら、リーダーシップを果たしていきたい」などと挨拶した。
全建の奥村会長は「今年も全国9ブロックで地方ブロック会議と、国土交通省と全建の共催による地域懇談会が開催されている。これらの会議は地域建設業が直面する諸課題について、官民が問題意識を共有し、双方が解決に向けた具体的な取り組みを進めていくという趣旨で開催されており、全建としても大変重要な会議と位置付けている」「地域建設業は、近年、頻発化・激甚化する自然災害から地域の安全・安心を守る地域の守り手としての使命に加え、ポストコロナの新たな時代において、いわば新しい地域の作り手としてもその中心的な役割を務めていかなければならないと考えている」「この会議では、私どもが魅力ある地域建設業を目指すにあたり、皆様方には諸課題について忌憚のないご意見を積極的にご発言いただき、議論の結果が官民それぞれの取り組みに反映されることを期待しています」と挨拶した。
ICT支援や運用指針徹底
週休2日環境整備など要望
提案議題1は公共事業予算の安定的・持続的な確保と国土強靭化予算の継続(特に関西では京奈和自動車道、名神湾岸連絡線及び大阪湾岸道路西伸部をはじめとする基幹道路の早期整備や主要河川の整備の強力な推進等)[奈良県建設業協会]、提案議題2は地元建設企業への受注機会の確保・拡大[福井県建設業協会]、提案議題3は働き方改革における担い手確保とi−Construction(1〈担い手確保〉−@設計労務単価、現場管理費等の引き上げA適正工期の更なる周知B担い手確保に向けた支援制度の充実C更なる工事書類の簡素化・平準化、2〈i−Construction〉−@推進への支援Aプレキャスト化の推進)[京都府建設業協会]、提案議題4は新担い手3法の推進(@発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)の徹底A適正利潤の確保B工事の発注・施工時期の平準化C週休2日を実現するための環境整備)[滋賀県建設業協会]、提案議題5は建設キャリアアップシステム(CCUS)[大阪建設業協会]、提案議題6は設計・積算および施工(@ASPの運用A工事発注前の事前調整B工事の設計変更C現場管理費用の増額D特殊材料単価の公表E市場単価に見合った単価設定)[和歌山県建設業協会]。
国交省は「7月に閣議決定された骨太の方針でも、国土強靭化の推進が盛り込まれた。公共事業予算の安定的・継続的な確保に取り組んでいく」「京奈和自動車道については西日本高速道路、地元自治体と協力して事業を進めたい」「透明性の確保などに留意しつつ、分離・分割発注や、適切な地域要件の設定など、地域企業に配慮した工事発注を行っている」「新担い手3法も踏まえ、働き方改革の推進など今まで以上に取り組みたい」「建設現場の環境改善、賃金を上げるということが大事だと認識している。国交省は、設計労務単価について、平成24年度の法定福利費を反映させる形で引き上げを行って以降、直近まで8年連続で引き上げを行っている。これは、労務単価の上昇が現場の技能労働者の賃金水準の上昇につながり、それが次の労務単価の上昇という、好循環につなげるために、雇用されている事業者の皆様に賃金の引き上げをしっかり行っていただいた結果であり、そういったことを着実に行っていただくことが重要だと考えている。国交省としても様々な機会に繰り返し要請させていただいている。本年3月にも建設業団体との意見交換会の中で、現場の技能労働者への適切な水準の賃金支払い、適切な請負金額での下請契約について、大臣自ら改めてお願いをさせていただいた。今後とも労働指標の賃金支払いの実態を丁寧に把握し、適切な労務単価の設定に努めたい」「週休2日工事については、建設業の将来の担い手を確保する観点から極めて重要と認識している。直轄では週休2日を確保した工事において、労務費、機械経費、仮設経費の補正を行っている」「中建審の工期に関する基準は、公共のみならず民間発注工事も対象としている。民間発注者にも、この趣旨をしっかり理解していただき、民間発注工事においても適正な工期が確保されることが極めて重要と考えている。改正法では、注文者に対しては工期に影響を及ぼす事象で認識しているものについては、契約締結までに建設業者に通知をすることと規定している。また受注者である建設業者においては、工事の細目を明らかにして、工程ごとの作業及びその準備に必要な見積りを行うこととしている。これらの取り組みが民間の受発注者間で適切に行われるよう、注視をしていきたい」「i−Constructionへの支援について、ICT活用工事における積算に関しては、実施要領や積算基準に基づき必要な費用を適切に計上できるようになっている。今年度は、標準のICT施工機械よりも規格の小さな施工機械を用いる場合は、見積りを使っていこうという取り組みなどに取り組んでいる。中小企業を含めたあらゆる主体がICT活用工事に取り組みやすい環境整備を進めたい」「コンクリートのプレキャスト化について、プレキャスト製品の利用拡大に向けて、予備設計などの段階で比較検討項目を明確化するとともに、工期の短縮や安全性の向上などどういった効果を評価するのか、そういったやり方について検討を進めている。プレキャスト製品の規格ごとにどうやって導入を促進していくのか検討を進めており、中型のプレキャスト製品は特殊車両で運搬可能な規格については原則プレキャスト化するようなことを検討していたり、大型プレキャストは工法の活用事例集をとりまとめて、周知していく取り組みを進めている」「総務省と連名で都道府県、市町村に対し、適正な予定価格の設定や適正な工期設定をはじめ、入札・契約の適正化のための取り組みを繰り返し要請している」「1月に改正された運用指針については、地域発注者協議会や入札契約担当課長会議など関係者が集まる会議を使って、運用徹底を働きかけている」「書類の簡素化は、監督職員と現場職員の重複確認の廃止などを進めている。更なる削減に向け、作成マニュアルを作成し、受発注者に周知している」などと回答した。
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