横浜市教育委員会は小・中学校の建て替え基本方針を見直す。将来の大幅な収支不足を見込む長期財政推計を踏まえた対応で、幅広な複合化の検討や学校統合、公民連携手法による事業執行といった観点から関係局と見直しを協議していく。また、校地管理業務の発注で不適切な事務処理の再発を防ぐため▽概算契約▽横浜市建築保全公社への業務委託▽管内一円工事―といった手法の導入を考えている。9月28日の市会・決算第1特別委員会で鈴木太郎氏(自由民主党・無所属の会)、梶尾明氏(立憲・国民フォーラム)の質問に鯉渕信也教育長が答えた。
小・中学校の建て替え基本方針は教委が2017年5月に策定。41年度までに約1兆円を投じて384校を建て替える内容で、17〜20年度の4年間で15校の建て替え事業校を選んだ。21年度にうち3校(17年度建て替え事業着手校)の本体工事着工を予定している。
一方、長期財政推計は財政局が9月に21年度の予算編成方針とともに公表。少子高齢化を背景に社会保障費が増加することなどから、65年度には単年度の収支不足が2000億円を超えるとしている。
鈴木氏から学校建て替えを巡る戦略の練り直しを求められた鯉渕教育長は「大変厳しい財政見通しが示されたことを踏まえ、関係局と基本方針の見直しをしっかりと協議していく」と表明。見直しの観点として▽これまで以上に幅広な複合化の検討▽少子化を踏まえた学校統合などによる施設量の縮減▽PFIなど公民連携手法による効率的な事業執行▽目標耐用年数70年超の施設保全で事業量を平準化―を挙げた。
また、20年度の建て替え事業着手校の一つである戸塚小学校の状況を問われた上野圭介施設部長は「平成27(2015)年に増築した校舎を生かして、全面建て替えではなく『部分建て替え』を基本に検討している」と説明した。
―校地管理、不適切処理防止へ概算契約など―
校地管理業務は学校の防球ネットやフェンスの補修、樹木の剪定、草刈りなどが内容。年間約1000件を発注しているという。
教委は8月、2019年度に発注した29件で総額約2233万円の未払いがあり、うち4件は入札案件(100万円超)を分割して見積もり合わせ(100万円未満)で発注していたと発表。加えて本来ならば複数社から徴集すべき見積もりを、1社から別の会社の分を含めて徴集したケースが950件あったとしている。
梶尾氏に抜本的な再発防止策をただされた鯉渕教育長は「他局で実施している概算で契約を行う業務委託契約や、建築保全公社への業務委託、緊急時にも対応できる管内一円工事などの手法を導入することにより、適正かつ効率的な業務執行ができると考えている」と答弁。
その上で「できるだけ早期にこれらの発注方法が可能となるよう、職員の職種転換等について関連部署と調整していく」と語った。
提供:建通新聞社