神奈川県内広域水道企業団と構成団体水道事業者(県、横浜市、川崎市、横須賀市)は、将来の水需要に見合った「水道施設の再構築」に取り組む方針だ。おおむね30年後には、浄水場8施設(1日当たり施設能力約350万立方b)で構成するとの将来像を描いている。実現に向けては、送水・配水エリアを再編した上で、構成団体水道事業者の老朽化した浄水場を廃止し、比較的新しい企業団浄水場の施設能力を向上させる。パブリックコメント中の「かながわ広域水道ビジョン(仮称)(素案)」で示した。
ビジョンは、水道システム最適化に向けた取り組みの方向性を示すもの。具体的な施策は、今後策定する5カ年の実施計画に盛る予定。
素案では今後の事業を取り巻く環境について、▽水需要の減少による料金収入(財源)減少▽労働人口減少により人材・技術力の確保が困難▽浄水場や管路の経年化進行▽改正水道法に基づく「水道基盤の強化」の推進―などと展望。
こうした事業環境を見据え、企業団と各水道事業者は、全体の施設能力を将来の水需要に見合う適正規模にするとした。具体的には、送水・配水エリアを再編した上で水道事業者の老朽化した浄水場を廃止。比較的新しい企業団の浄水場の施設能力を向上させる。
素案では、施設能力の現状と目指す姿(イメージ)を示している。現状は各水道事業者の浄水場7施設(谷ケ原、寒川、川井、西谷、小雀、長沢、有馬)と企業団の浄水場4施設(伊勢原、相模原、綾瀬、西長沢)で構成している。1日当たり施設能力は約430万立方b。
将来的に目指す姿は、各水道事業者の浄水場4施設(谷ケ原、川井、西谷、長沢)と企業団の浄水場4施設で構成するとした。1日当たり施設能力を現状よりも約80万立方b下げるもので、各水道事業者の能力を縮小する一方、企業団の施設能力を向上させる格好だ。企業団は、既存施設を延命化させながら3浄水場の増強を優先し、その後、西長沢浄水場の再整備に着手することになる。
施設の修繕・更新については、「施設管理システム」などを活用しながら計画的に実施。故障を未然に防ぐ取り組みを進める。
また、頻発化する自然災害や、事故などのリスクに対しては、水道施設の耐震化や取水施設の浸水対策、火山灰対策などを行っていく。補修資機材の備蓄も計画的に進める方針だ。
この他、業務を効率化させるため、AIや官民連携といった新たな手法や発想を積極的に取り入れていく。
ビジョンは、学識経験者らで構成する検討委員会(委員長・石井晴夫東洋大学経営学部教授)などで策定作業が進んでいる。公表は2021年3月ごろの予定。
提供:建通新聞社