東京都の設置した「東京高速道路(KK線)の既存施設のあり方検討会」(座長・出口敦東京大学大学院教授)は、KK線の既存高架施設を保全し、歩行者中心の公共空間に用途転換する提言書の素案をまとめた。目標年次は2030〜40年代に設定。整備の事業主体や手法については、今後地元区やKK線の運営会社である東京高速道路会社などと議論を深める。管理運営については、現行の手法を継承し、高架施設上部は無料で使用できる公共性を維持する。
KK線は、高架施設の上部を無料の自動車専用道路(高速道路)として活用している。区間は、中央区銀座8丁目(蓬莱橋)〜銀座1丁目(新京橋)の総延長約2`。高架下にあるビルの賃貸収益で道路建設費と運営費を賄っている。戦後の銀座復興と自動車交通量の緩和を目的に、東京高速道路会社が都有地を定期借地権で賃借して築造した。
現在は首都高速道路八重洲線と接続しているが、将来的に首都高日本橋区間の地下化が実現すると、現在のKK線は自動車専用道路としての役割が低下する。KK線の廃止を見越して、高架施設の利活用を議論することになった。
今回の素案では、KK線の高架施設を保全し、歩行者を中心に次世代モビリティの導入も含めた空間への用途転換に向けて検討する方向性を示した。
KK線の目指すべき将来像として@高速道路の形態を生かした広域的な歩行者系ネットワークの構築A連続する屋外空間を生かした大規模なみどりのネットワークの構築B既存ストックを生かした地域の価値や魅力の向上―の3点を提示。
目標年次は、都の上位計画や首都高日本橋区間の地下化の動向を踏まえて設定。首都高の地下化は今年4月に都市計画事業認可を受けており、完成まで15〜20年間かかると想定している。これを踏まえ、30〜40年代にKK線を新たな用途へと転換する。
今後、計画を具体化するに当たっては、地元区(千代田・中央・港区)と国、東京高速道路などの関係者で議論を深める。都市計画を変更する必要性や用途転換に向けた事業主体・手法の設定、周辺の再開発など関連するまちづくりとの調整、歩行者デッキ・地下通路との効果的な接続方法などについて留意する必要があると素案で結論づけた。
検討会は、今回の素案を基にした「提言案」を次回の会合でとりまとめ、年内にも都に提言する予定。
提供:建通新聞社