多摩川を対象として、河川整備による治水対策と流域の流出抑制対策などを一体的に進める「流域治水プロジェクト」の検討作業が始まった。国土交通省関東地方整備局が8月21日、東京都と神奈川県、山梨県の他、多摩川流域の30市区町村が参画する多摩川流域協議会を開き、プロジェクトの素案を示した。河道掘削や堤防整備といった治水対策に加え、沿川自治体による下水道整備やソフト対策を組み合わせ、本年度内にプロジェクトを策定。戦後最大の洪水となった2019年東日本台風と同規模の洪水に対しても越水を回避し浸水被害を軽減できるようにする。
19年東日本台風により、多摩川は東京都内でも人口が密集した中下流部で氾濫危険水位を大幅に超過した。世田谷区玉川で溢水により面積約0・7fの浸水被害が発生した他、各地で内水氾濫が起こった。
協議会では、京浜河川事務所の澁谷慎一所長が「河川の水位を下げる治水対策に加えて、(市街地で発生する)内水氾濫を防ぐには流域の対策が必要なことが改めて認識された」と発言。沿川自治体に流域治水プロジェクトへの協力を呼び掛けた。
多摩川では、東日本台風の被害を受けて、5年間で約163億円を投じる緊急治水対策に1月から着手している。流域治水プロジェクトは、緊急対策に周辺流域のハード・ソフト対策を追加し、より長期の事業として実施する見通しだ。
21日に提示したプロジェクトの素案では、国交省による河川対策として▽中流部、下流部での河道掘削▽大丸用水堰の改築▽堤防整備―を実施。また、都県が管理する区間の河川改修についても今後、プロジェクトに追加する。
沿川自治体が実施する流域対策では▽流出抑制施設の整備▽下水道樋管のゲート自動化、遠隔操作化▽土のうなどの備蓄資材の配備―を盛った。
これに加えて、ソフト施策として▽国・自治体間の連携に向けた光ケーブル接続▽簡易型河川監視カメラの設置―などにも取り組む。
今後、協議会では周辺自治体による流出抑制対策や土地利用の見直しについてもプロジェクトに位置付けることを検討する。
提供:建通新聞社