国土交通省四国地方整備局との意見交換の席上、建設キャリアアップシステム(CCUS)について「技能労働者の実情や地域建設業の現状、費用対効果を考え、もろ手を挙げて賛成できない」と表明した香川県建設業協会の森田紘一会長。技能労働者の処遇改善などの必要性を認めつつ、制度構築の進め方に異議を唱えた森田会長に、地域建設業の抱える課題とCCUSの在り方について聞いた。
―四国での建設技能者の現状をどのように捉えているのか。
「工種によって需給の差はあるし、年齢構成や過不足に違いはあるが、四国全体で見れば、技能者不足は深刻とは言えず、すぐに問題になるような状況にはないだろう」
「どの工種も高齢化が進んでいることは間違いないが、それは建設業だけの話ではない。日本の生産年齢人口は減少しており、構造的な問題だ。ただ、人材不足に関する認識について、大都市と地方、そして大手と中小に大きな温度差がある」
―その温度差とはどのようなものか。
「四国で深刻になっているのは若い技術者の不足だ。地元の中小建設業者にとって、技術者の確保は難しい。給与や休日など処遇を向上させても、大手あるいは都市部の建設業者に人が流れてしまう。技能者不足よりも前に、地元の建設業は技術者が足りなくて工事を動かせなくなる」
―地域の実情を踏まえた課題対応策とはどういうことか。
「製造業や介護などの業界でも、外国人労働者がいなければ成り立たなくなっている。香川県内だけでも外国人労働者は1万人を超えており、協力業者でも外国人を採用している」
「技術者の不足に対応するため、自社では今、ベトナム人を採用している。高い技術力と日本で働きたいという意欲を持った若者だ。彼らは大学で建築や土木を学び、現地で日本語能力試験に合格して来日している。1年程度で漢字とひらがなで作業報告書などを書けるようになり、CAD検定などは日本人よりも合格率が高いくらいだ」
「だが、それでも建設業の技術者として彼らの就労ビザを確保するのは今もって“至難の業”だ。地域の守り手である建設業を持続的に発展させるのであれば、こうした支援策も必要ではないか」
―ではCCUSの必要性をどう捉えているのか。
「もちろん技能労働者の処遇改善は必要だ。しかし、誰もが“良い制度”だと認識していれば、利用者である建設業団体が赤字の穴埋めをしなければならないような問題は起きない。技能者のキャリアパスや処遇改善などの目的に、職人の親方も当初は『良い制度だ』と話していたが、今では『何を目指しているのか分からない』と言うようになってしまった」
「ドイツのマイスター制度などが理想なのだろうが、それは歴史と文化に裏打ちされたものだ。技能者、事業者、発注者にとって、情報登録やその利用がよりシンプルで使いやすいものでなければ、登録や利用の拡大にはつながらないだろう」
「登録者の数に目標を置くのではなく、地域ごとの実情、課題を踏まえたシンプルなシステム構築を目指すとともに、地域の課題に対応した施策を合わせて実施することが必要ではないか」
提供:建通新聞社