県内建設業(事業所規模5人以上)で働く従業員の1カ月当たりの労働時間が年次的に減少していることが分かった。2019年の平均実労働時間数は170・5時間/月となり、5年前と比べて13時間減少。週休2日などの働き方改革の取り組みが数字として表れつつあるものの、他産業との格差はなかなか縮まらない状況だ。
県の毎月勤労統計調査(地方調査)によると、建設業の19年平均実労働時間数は事業所規模5人以上で170・5時間/月(前年比0・3%減)、同30人以上で167・1時間/月(同3・9%減)となった。
事業所規模によって差は見られるが、直近5年間での労働時間は抑制傾向にあり、14年(183・7時間/月)と比べると13・2時間の減。出勤日数も2日程度減少した。
ただ、産業分類別で見ると手放しでは喜べない現状がある。19年度の全産業平均(144・9時間/月)と比べて建設業はまだ25時間も多く、全15分類の中でも運輸業・郵便業(176時間/月)に次いで2番目。改善してもなおこれだけの開きがあることを考えると、以前がどれだけ過酷な労働時間だったかが分かる。
事業所規模5人以上と30人以上で差が生じている点も、推察できる要素がある。労働時間は、規模が大きいほうが低水準となっており、従業員が少ない企業からよく聞こえる「代わりになる人がいないので残業するしかない…」といった声が数字に表れているように見える。
現場の週休2日制が推進される中、課題となっている時間外労働がどこまで改善できるか。今後の推移を注視しておく必要がある。
◆記者の眼
浮かぶ課題「工期」と「人手」
改善傾向にあるとはいえ、他産業との格差が依然目立つ建設業の労働時間。課題を挙げるとすれば、やはり工期や人手の問題だ。
公共事業は、新・担い手3法で「適正工期の設定」や「施工時期の平準化」が発注者責務として明文化された。ただ、法整備は行われたものの、市町村レベルの対応はまだ疑問視される状況。民間工事のウエートが高い建築主体の業者からも、工期面では嘆きの声がよく聞こえてくる。
働き方改革の裏側で、業界の実情が垣間見えるデータ。発注者は親身になって受け止め、施策に反映してほしい。
(田原謙一・常務取締役(兼)報道部長)