神奈川県住宅供給公社は、二宮団地(二宮町)創生に向けた取り組みとして、「温泉・湯治施設を核とした交流拠点整備事業」を検討している。事業スキームは「民設民営(BOO)方式」を想定。公社と民間が共同出資して目的会社(SPC)を設立し、土地だけ事業用定期借地でSPCに貸すもの。公社は既存建物の撤去や補償などを行うのみで、建設投資を低減できるという。この他の取り組みとしては、廃止住棟・跡地の利活用、リノベーションセンターなどを検討している。2020年度は計画の精度向上に努め、翌21年度に共同出資者を選定する方針だ。
国土交通省のPPP/PFI導入に関する支援対象(19年度第1次分)となっていたもので、今年3月に公社、Co.lab、YADOKARIの3者で調査報告をまとめた。検討した事業は、▽温泉・湯治施設を核とした交流拠点整備事業▽廃止住棟・跡地の利活用▽公民連携によるリノベーション・センターの検討▽団地で農業暮らし支援事業―の四つ。
検討の結果、過去3年半の新規入居者191人の2割を20歳代、30歳代の「ミレニアム世代」が占めていることに着目。ミレニアム世代を誘致し、団地の世帯循環を進めることを目標に定めた。
個別事業のうち、交流拠点整備については、サウナを兼ね備えた中規模温浴施設を採用するとし、これと合わせてウェルネス関連(農、食、フィットネス関連)のインキュベート施設、文化活動、コミュニティ活動の拠点となる交流拠点の基本計画を策定した。
事業スキームは、「公設+長期包括委託方式」「民設民営(BOO)方式(公社が目的会社に出資)」「民設民営(BOO)方式(民間のみ)」の三つを比較検討し、地域活性化への貢献などを理由に、目的会社によるBOO方式を選定した。
廃止住棟・跡地の利活用は、交流拠点と連携する形で行っていく方針。民間事業者などから提案が寄せられているものの、具体的な計画とまでは言えないため、今後、提案者と協議を継続するとともに、新たな事業提案も検討する必要があるとしている。
リノベーションセンターについては、地元金融機関などとのコンソーシアム形成に向けた協議を開始した段階で、今後、メンバー構成や役割分担など具体的な検討を進める予定。団地で農業暮らし支援事業の実施に向けては、農産物の付加価値を向上させるための加工場などを検討していく。
今後については、今回の調査を基にした事業性のさらなる検討(20年度)、実施の判断・公表と共同出資者などの選定(21年度)、基本・実施設計など(22年度)、解体工事・建設工事(23年度)、施設の供用開始(24年度)―としたスケジュールを掲げている。
二宮団地(二宮町百合が丘1ノ2他)は1962年から公社が土地区画整理により開発した約72f、約2300戸の郊外型ニュータウン。公社の一戸建て分譲住宅が中核であるものの、公社は賃貸住宅28棟856戸と商店街の施設を所有。少子高齢化などによって公社住宅の空き家率が40%を上回ったため、2020年度までの5年間で10棟276戸の賃貸を終了することになっている。
提供:建通新聞社