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西日本建設新聞社
2020/06/23

【熊本】県、事業化判断を先送り 空港アクセス鉄道

 蒲島郁夫知事は、阿蘇くまもと空港へのアクセス鉄道の事業化について「いったん立ち止まる」と話し、判断を先送りする考えを示した。有識者や経済界などで構成する検討委員会を今年度に設置し、議論を深めていく方針。12日の県議会本会議で、藤川隆夫議員の質問に答えた。
  空港アクセス鉄道について藤川議員は、県が昨年度、鉄道運輸機構にルートや事業費、需要予測等の詳細調査を委託していることを取り上げ、調査結果を説明するよう求めた。さらに「多額の費用がかかる事業であり、県民に説明し、理解を得ることが必要」と話し、今後の進め方を尋ねた。
 蒲島知事は、詳細調査で示されたルート案が、いずれも概略調査時の事業費380億円を上回る結果になったことを報告し、「残念に思っており、可能な限りコスト縮減に取り組む」と話した。
 検討委員会の設置については、「航空旅客者が大幅に減少するなど、昨年度調査で前提にした状況と、新型コロナ感染拡大後の現在の状況とは大きく異なっている」とし、新型感染症が交通・観光業界に与える影響や、BRT(バス高速輸送システム)を含めた他交通網との比較について意見を聞くとした。費用便益分析等も算出し、事業化の判断指標とする考え。
 藤川議員は、熊本空港のターミナルリニューアルや九州の中での地理的優位性・利便性を上げ、「これを発揮するため、鉄道の分岐延伸は必要と考える。できるだけ早く着手の方向へ舵を切っていくことが大事」と訴えた。

4ルート案 事業費大きく上回る

 阿蘇くまもと空港のアクセス鉄道について蒲島郁夫知事は、前年度に鉄道運輸機構へ委託して実施した詳細調査の結果を報告した。詳細調査で検討したルートは4案。いずれも、2018年度の概略調査での事業費380億円を、57〜181億円上回る結果になった。
 18年度に示した概略調査の案は、JR三里木駅から分岐し、県民総合運動公園付近に中間駅を設置、空港に至るルート。高架構造を基本とし、事業費380億円(税抜)を試算していた。詳細調査では、概略調査の検討ルートをもとに、現地調査や地盤状況等を踏まえ、4案を検討した。
 第1案は、菊陽町の国道57号沿線市街地を高架で通過するルートで、事業費437億円。概略調査のルートに最も近い。57億円の増加は、空港への登り口となるトンネルを長くするなど、構造の一部を見直したため。
 第2案は、第1案と経路は同じだが、国道57号沿線市街地を高架ではなくトンネルで通過するもの。事業費493億円。 
 第3案は、第2案のトンネル延長を可能な限り短縮したもの。事業費459億円。
 第4案は、空港への登り口について、空港周辺の既存施設を避けるため大きく迂回するルートで、事業費は最大の561億円となる。
 採算性については、国・県・JRが各3分の1を負担した場合、十分に見込めるとした。一方で、国が18%を補助する現行の制度では採算は見込めないとの結果になった。
 蒲島知事は「県民負担の最小化を図るため、構造・工法を精査し、コスト縮減を追求していく」と説明。さらに「JR九州には、整備費の3分の1を上限に、増益効果の一部を拠出頂くというスキームに同意頂いている。この他県に類のない画期的な取り組みを踏まえ、国に対して3分の1の財政支援を継続して要望していく」と話している。

提供:西日本建設新聞社
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