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建設経済新聞社
2020/06/11

【京都】左京区岡崎の京町家の数寄屋建築 シェアハウスに保存・活用

 京都市左京区岡崎の明治期に建てられた栗原家住宅(京町家)について、京都市の「歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を活用し、シェアハウス(寄宿舎)に用途変更する計画が進められている。
 伝統的な木造建築物などの歴史的建築物は、建築基準法が適用されることにより、建築物の保存、活用のための建築行為が困難となるが、同条例により建築基準法の適用を除外する一方、安全性の確保や市街地環境の保全等について、同条例により、建築物の価値を踏まえながら、状況に応じた措置を講じることで、歴史的建築物の保存及び活用を図る。
 栗原家住宅の主屋と門がこのほど、同条例に基づく保存建築物に登録された。
 京都市左京区岡崎東福ノ川町10の敷地846・31uに建つ数寄屋建築の栗原家住宅・主屋はW造2階建、延267・94u(明治36年築)。平成31年2月に京都市の京都彩る建物や庭園に選定、同年4月に重要京町家に指定。令和元年10月には歴史的風致形成建造物に指定された。
 敷地内には栗原家住宅・門(W造平屋建)(大正後期〜昭和初期建築)、離れ(W造2階建、延28・50u)、土蔵(W造2階建、延37・26u)がある。
 計画地の用途地域は第一種低層住居専用地域で、指定建ぺい率は60%、基準容積率は100%。土地の所有者はくろ谷金戒光明寺。
 京都市内で京町家を改修したシェアハウスや飲食店を複数運営する合同会社友心町家(代表社員栗原佳美氏、京都市上京区真盛町742−5)が建物を所有し、運営を行う。
 当該建物をシェアハウスに用途変更するとともに、水廻り等の一部増築を行う。改修後の主屋は延296・86u。今回の計画には末川協建築設計事務所(京都市左京区)が参画している。
 整備にあたり、岡崎・文教地区の邸宅群の歴史を継承することを念頭に、数寄屋建築としての特徴的な意匠の保存を基本とし、座敷と庭園を中心とした「おもてなしの空間」を最大限に活かす。
 火災に対する安全性の確保では、電気配線の更新、漏電ブレーカーと感電ブレーカーの設置、消防センターへの自動通報装置の設置、井水(2ヵ所)などの整備、階段の緩勾配化、手すりの両側設置のほか、非常用照明と誘導標識などの設置、軒裏の準耐火構造仕様、屋根の不燃材(瓦及び鋼板)への葺き替え、外壁の防火構造仕様、換気口へのファイヤーダンパーの設置などのほか、外壁の開口部の道路側は木製建具+耐熱強化ガラス、それ以外は防火設備、網入りガラス、木製防火雨戸の設置を行う。
 耐震改修では、部材(柱、梁及び土壁など)の健全化、土壁の増設を実施。一部土葺きの屋根を桟葺きとし、屋根の軽量化を図る。
 岡崎周辺の近代庭園の流れをくむ前庭(敷地南側)は現状を保存し、各座敷から縁越しに花木や光、風などの自然や四季を感じることができる空間とする。奥庭(敷地北側、約200u)は避難できる空間として維持しながら、庭園、駐車場、喫煙場所として整備する。
 2項道路の後退に伴い、南側のCB造の既存ブロック塀を撤去し、石積+生垣とする。南西側の門は現状保存する。
 諸手続きを経て着工し、令和3年3月頃の完成を予定。その後、同年9月頃の入居開始を目指す。