東京都が設置した「東京高速道路(KK線)の既存施設のあり方検討会」(座長・出口敦東京大学大学院教授)は、中央区銀座を通る高架道路「KK線」の目指すべき将来像の案をまとめた。自動車専用道路の廃止を見越し、既存の高架は保全して上部空間を歩行者中心の公共空間に機能転換する案を提示。みどりのネットワークの整備や、既存施設を生かした地域の価値・魅力向上を図る。
検討会では、将来像として▽高架道路の形態を生かした広域的な歩行者系ネットワークの構築▽連続する屋外空間を生かした大規模なみどりのネットワークの構築▽既存ストックを生かした地域の価値や魅力の向上―の三つの案を挙げた。
既存の高架を保全し、地上と高架内施設、周辺の建物間を誰もがスムーズに往来できるユニバーサルデザインの公共空間を整備することを提案。一方で、地域特性や施設の状況なども考慮し、高架を一部区間で撤去する可能性についても検討する。高架上では、次世代型モビリティの導入を検討することも必要だとした。
また、屋上や壁面を緑化することでみどりのネットワークを形成する。高架の屋上から街を俯瞰(ふかん)して楽しめる拠点を整備することで、地域の新しい魅力を創出する案をまとめた。今後、これらの将来像を具体化するための管理・運営方法について検討を進める。
「東京高速道路(KK線)の既存施設のあり方検討会」は、2019年10月に設置。約1年間をかけて既存施設の有効活用策をとりまとめ、都に提言する。
《別線地下化案の検討進む》
KK線は、中央区銀座8丁目(蓬莱橋)〜銀座1丁目(新京橋)間を通る総延長約2`の自動車専用道路。東京高速道路会社(中央区)が東京都の所有地を借りて築造し、1966年に全線の供用を開始した。
高架下には14棟のビルがあり、テナント数は約400店舗。入居する「銀座インズ」や「西銀座デパート」「銀座ナイン」などのショッピングセンターやオフィス、駐車場のテナント賃料で道路建設費と運営費をまかなっている。
首都高速道路日本橋区間の地下化に併せて八重洲線が現在の2路線から4路線に拡幅することが決まったものの、八重洲線に接続するKK線の構造強化が課題となっていた。KK線は設計車両重量とカーブ区間の幅員が不足していることなどから大型車の通行を規制しているためだ。
この課題解決に向け、都と国土交通省、首都高速道路会社で構成する「首都高都心環状線の交通機能確保に関する検討会」では3月、最適な策として別線を地下に整備する案を具体化していくことで合意。実現すれば、現在のKK線は廃止することになる。この検討と並行して、都は高架道路の利活用や沿線のまちづくり方針案のまとめを進めている。
提供:建通新聞社