彦根市は、令和元年度(2019年度)まで3ヵ年で行った耐震診断の結果に基づき、国宝彦根城の耐震補強整備に令和4年度(22年度)にまず「天守」から着工したい考え。その後「附櫓(つけやぐら)及び多聞櫓(たもんやぐら)」の下及び付近にある、崩落の危険を指摘されている石垣を補強していきたい考えだが、石垣の耐震補強は全国的にも施工例が少なく、工法や費用面で検討を行い最終判断する。
同市では、来場者の安全確保と文化財的価値の維持を図る目的で、国宝彦根城を天守、天守玄関、附櫓及び多聞櫓、さらに石垣とその上に建つ建造物に分け、平成29年度(17年度)から3ヵ年かけそれぞれの耐震診断を建築研究協会(京都市)に委託。診断と並行して学識者らで構成する彦根市国宝彦根城天守、附櫓及び多聞櫓耐震対策委員会(麓和善委員長・名古屋工業大学大学院教授)において専門的見地から検討し、先ごろ評価を取りまとめた。
検討結果によると、天守石垣は簡易解析の結果、大地震動(震度6強)によって崩落する恐れはなく、建造物については安全確保のため耐震補強を行う必要がある。天守玄関は「穴蔵石垣」を耐震補強すれば大地震動時の建造物倒壊の恐れはない。「附櫓及び多聞櫓」は、附櫓〜着見台までの石垣は大地震動で崩落する可能性があるが危険度・緊急度が高いと断言できず、経過観察を行う。建造物は大地震動で柱が折損する恐れがあるため、石垣の耐震補強の有無に合わせ、活用を考慮した上で補強の実施を判断するとしている。
これを受け市では今年度、来場者の安全確保のため、現在の多聞櫓から附櫓を経由する天守への入城ルートを変更し、多聞櫓からの入城を禁止すると共に避難誘導計画を策定する。石垣の補強など検討事項についての精査と並行し、令和3年度(21年度)には耐震補強に係る設計、順調にいけば令和4年度(22年度)に天守から耐震補強を進めていきたい考えだ。
提供:滋賀産業新聞